研究課題/領域番号 |
22H03239
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
西村 幸司 帝京大学, 医学部, 講師 (20405765)
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研究分担者 |
扇田 秀章 滋賀県立総合病院(研究所), その他部局等, 専門研究員 (20761274)
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50397634)
伊藤 壽一 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (90176339)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 蝸牛神経 / 細胞移植 / 分化転換 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
本研究では、(1)ヒト人工多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)から誘導した蝸牛神経前駆細胞を、蝸牛神経を障害した難聴モデル動物の内耳(蝸牛)に移植することに より、蝸牛神経を再生させ、聴覚が回復するかを検証する。(2)人工内耳から蝸牛神経を刺激するのに、電気刺激の代わりに光刺激を用いる新たな人工内耳を作製し、動物に対する有効性の検討を行う。(3)ヒトiPS細胞の移植で再生した蝸牛神経を有する難聴動物に対し、光刺激人工内耳を使用し、その有効性(難聴の回復)を検証する。 Thy1-ChR2-YFPマウスをB/6マウスと交差しヘテロマウスを得た。ヘテロマウス同士の交差で生まれた仔をジェノタイプし、ホモマウスを判別した。1-30 Hzのレーザー光を中耳を開放したThy1-ChR2-YFPマウスの蝸牛外から照射し、光刺激により惹起された波形を得た。蝸牛神経の反応による波形か否かを検証する目的で、ウアバインを後半規管から内耳に局所投与し1型ラセン神経節細胞を化学焼灼した、蝸牛神経障害モデル動物を用いて同様の実験を行った(n = 2)。1匹においては蝸牛外からの光刺激による反応は完全に消失したが、1匹においては刺激終了後から2 ms後にピークがある波形を認め、蝸牛神経以外の反応を記録したと推察された。高度難聴患者の病態を模した難聴モデル動物を作製した。本研究では、2種類の難聴モデル動物を作製した。①蝸牛有毛細胞と蝸牛神経両者の障害モデル動物。②蝸牛神経のみを障害し、蝸牛有毛細胞はほぼ正常に保たれる難聴モデル動物。実験動物にはモルモットを使用した。①には佳菜マイシン、フロセミドの全身投与を行った。②にはNa/K-ATPase阻害剤であるジゴシンの蝸牛内直接投与を行った。①、②とも比較的安定した障害モデルを作製できた。移植細胞ソースの蝸牛神経前駆細胞をヒトiPS細胞から誘導した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
移植細胞ソースの蝸牛神経前駆細胞をヒトiPS細胞から誘導した。すなわち、GFP-hiPSCから既存の分化誘導法(Ishikawa et al., 2017, J of TERM)を用いてNSCを誘導し、10000000 cell/mlの濃度に調整したものを1回の移植に500 μL以上準備した。光刺激による聴性脳幹反応の条件検討を行い、蝸牛への光刺激による反応を得た。聴覚刺激に起因する反応か否かを検証するために、蝸牛神経を障害したモデルを用いて光刺激を行った。蝸牛有毛細胞が障害されるモデル動物と、蝸牛神経が障害されるモデル動物を作製し得た。
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今後の研究の推進方策 |
光感受性遺伝子として、470 nm付近にピークをもつChR2と、500 nm付近にピークをもつChronosの2種類を使用する予定である。光刺激の出力を高く保つためにLEDではなく、レーザーを光源として使用する。レーザーにカニューラを装着し、より細経のファイバー(200-300 μm)を蝸牛内に挿入し、直接蝸牛軸を光照射する。使用動物はマウスとモルモットを用い、双方のoABRの波形特性を記録する。ヒトiPS細胞由来の神経前駆細胞を蝸牛軸に移植し、生着と神経分化、および聴覚の機能回復を検証する。in vitroでAAVによりChR2を神経前駆細胞に発現させ、蝸牛神経障害モデルに神経前駆細胞の細胞移植を行う。聴覚機能の回復は光刺激によるABR反応で検証し、蝸牛の組織解析を行う。
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