研究課題
加齢黄斑変性(AMD)は視覚障害の主要原因である。網膜色素上皮(RPE)は恒常性維持に不可欠でAMDの病態に関与している。滲出型AMDに対して治療されるが、RPE下の脂質沈着や萎縮など病態背景に介入する治療はなく、萎縮型AMDの治療法もない。RPE関連の加齢変化と病態を解明することで、滲出型AMDの発症予防や萎縮型AMDに対する新規治療法の開発に繋がる。我々はRPEの生理機能に関連した加齢変化であるRPE下の脂質沈着に注目してきたが、「疾患発症に繋がる慢性炎症はそもそも脂質沈着排除とブルッフ膜リモデリング機構である」という観点で、RPEと肥満細胞とマクロファージの役割を中心に病態解明を目指す。光傷害モデル:脂質沈着マウス(apoE ノックアウトマウス[KO mice])に対し、レーザー脈絡膜新生血管(CNV)誘発モデルを用いて沈着脂質のCNV発生への影響について評価した。野生型マウスの8週齢のものと老齢として48週齢のもの、ApoE KOの10週齢のものと52週齢のものに対して、レーザー光凝固によりCNVを誘導、安楽死後に眼球摘出、固定の上、切片を作製して、Z軸撮影により、CNVの体積を算出したところ、ApoE KO 52週齢のものが最もCNVが大きかった。ついで48週野生型、Apo E KO 10週、8週野生型の順となり、脂質沈着、加齢はCNV発生のリスクであることが示唆された。次に、光傷害の影響をみるために、光傷害実験装置(メイヨー有限会社)を用いて、LED白色灯、6,000ルクス、3時間のの光線暴露を行ったあと、同様に光凝固によるCNV誘導を行ったところ、光傷害なしに比較して、大きなCNVが誘導された。
3: やや遅れている
教授の入れ替えに伴い、研究室の秘書、実験助手、中堅医師の退職などで、実験業務のサポートが手薄になった。COVID-19流行、ウクライナ問題などに関連して、実験用の硝子体手術装置のレンタルやボンベなどの入荷が滞った。
細胞培養:マウスの眼球アイカップから、トリプシン処理、擦過、ピペッティングでRPE細胞を分離、F10培地+10%FBSで培養する。肥満細胞の培養:野生型マウスを解剖し大腿骨と脛骨から骨髄中細胞を分離し、RPMI1640培地+10%FBSで6週間培養し、肥満細胞への分化誘導する。マクロファージの培養:野生型マウスにBrewer'sチオグリコレート培地を2ml腹腔内注射し、4日後、冷PBS(5 ml)腹腔内注入でマクロファージを収集する。RPEスフェロイド作製:RPE細胞を4500個/ウェルで非接着96穴丸底培養皿に播種、メチルセルロース添加DMEM/F10培地内で培養し作製する。1週間培養後、回収し、10cm培養皿にDMEM培地で1週間培養後、共培養に使用する。RPEスフェロイド、肥満細胞、マクロファージを共培養: ラブテックチャンバーにて、DMEM培地で共培養を行い、1週間後にRPEスフェロイド、培養液を回収した後、肥満細胞/マクロファージを免疫染色、または、セルライセートを調整しELISAかウェスタンブロットでタンパク質発現の共培養前後の変化を調べる。肥満細胞脱顆粒(萎縮型AMD)モデル:脱顆粒はsnake venom-like compound 48/80のペレットの結膜下移植による徐放で誘導する。脱顆粒の抑制はケトフチフェンフマル酸塩やクロモリンナトリウムで行う。また、トリプターゼ阻害薬APC366も使用する。シングルセルRNAシーケンス:萎縮型AMDモデルやレーザー脈絡膜新生血管モデルから採取した網膜や網膜色素上皮/脈絡膜複合体をサンプルとして、マクロファージ、肥満細胞などのプロファイルを調査する。学内の研究室などに相談しながら、外注で行うか、学内機器を用いて実施するか計画を立てる。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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