研究実績の概要 |
本研究の目的は、脱分化脂肪細胞(Dedifferentiated Fat Cells、以下DFAT)を減圧環境下でコラーゲンスポンジの空隙内に浸透させた人工真皮を作製し、それを真空凍結乾燥処理を施すことで常温で保存可能な再生医療技術導入創傷治療材 (DFAT含浸 真空凍結乾 燥人工真皮)の開発し、その創傷治癒促進効果を検証することである。2022,2023年度に行った研究実績として、①DFATの調整:SD系ラットの成熟脂肪細胞を天井培養し凍結保存した。②自作簡易減圧浸透装置内で人工真皮(Pelnac、コラーゲンスポンジ単層タイプ、GUNZE)上にDFAT懸濁液を散布して減圧してコラーゲンスポンジ内に細胞浸透を試みたところ-70cmHgで全層に浸透させることができた。③-70cmHgの減圧下でDFATを含浸させた人工真皮を作製して、真空凍結乾燥機CHList(ALPHA1-4/2-4LSCplus, KUBOTA社製)を用いて真空凍結乾燥処理を施した。真空凍結乾燥前後で人工真皮内のDFATを走査電子顕微鏡で確認したところ、真空凍結乾燥前にDFAT細胞はコラーゲンスポンジの間隙内に確認され、真空凍結乾燥後でもDFAT細胞は凝集していたが細胞形態は維持されていることが確認された。④DFAT含浸人工真皮の新鮮状態、凍結保存後、真空凍結管相互の3群について、再度DMEM培地に浸漬して攪拌後にその上精中に含まれるサイトカイン(VEGF、bFGF)を定量解析した。その結果、新鮮群、凍結保存群、真空凍結乾燥群でそれぞれ、VEGF: 2.2±1.0,4.1±2.2, 8.4±5.0pg/mL, bFGF: 2.0±1.2, 1.1±0.4, 6.6±1.4pg/mLであった。VEGF, bFGFいずれも真空凍結乾燥群で放出量が最も多く、bFGFでは他の2群と比較して有意に多かった。
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