研究課題/領域番号 |
22H03254
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
波多 賢二 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (80444496)
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研究分担者 |
宇佐美 悠 大阪大学, 大学院歯学研究科, 講師 (80444579)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 軟骨細胞 / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
2023年度はシングルセル解析ならびに空間的トランスクリプトーム解析から明らかとなった遺伝子の機能解析を行った。まず、シングルセル解析により表層軟骨細胞、増殖軟骨細胞、前肥大化軟骨細胞および肥大化軟骨細胞の細胞クラスターを同定し、それぞれのクラスターにおける発現変動遺伝子を検討した。その結果、増殖軟骨細胞から肥大化軟骨細胞への移行期に存在する前肥大化軟骨細胞に特異的に高発現する新規遺伝子として、Uts2b,Cpa6, Cd200, Kcnt2, Serinc5を同定した。さらに成長板軟骨における空間的遺伝子発現をVisiumにより解析しシングルセル解析との統合解析を行った結果、Serinc5が前肥大化軟骨細胞に特異的に発現していることを見出した。前肥大化軟骨細胞におけるSrinc5の特異的発現はIn situ hybridization法によっても確認され、その発現部位はIhhおよびPTH受容体と一致していた。さらに間葉系細胞凝集から肥大化までの軟骨細胞分化を再現するマイクロマス培養においてSerinc5はIhhと同じ発現動態を示しことが明らかとなった。さらにSerinc5はSox9依存性のCol2a1およびAcan遺伝子発現の促進を抑制していたことから、Serinc5は増殖軟骨細胞のマーカー遺伝子の発現を促進することで軟骨細胞への肥大化を制御している可能性が示唆された。そのメカニズムとしてSerinc5はSox9の遺伝子発現ではなくSox9の転写活性を阻害している可能性が、レポーターアッセイにより明らかとなった。一方、Serinc5の過剰発現は肥大化軟骨細胞のマーカー遺伝子であるIhhおよびCol10a1の遺伝子発現に影響を与えなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度に増殖軟骨細胞から肥大化軟骨細胞への分化移行を制御する遺伝子の同定に成功している。しかし、scATAC-seq解析との統合解析が終了していないため、「やや遅れている」と判断した。scATAC-seq解析は2024年度の前半に終了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、まず①2023年度に同定した前肥大化軟骨細胞に特異的な遺伝子Serinc5の役割の解明を進める。まず、増殖軟骨細胞で機能する転写因子Sox9や、肥大化軟骨細胞の遺伝子発現に重要な転写因子であるRunx2,Mef2c,Sp7/Osterixとの相互作用を検討することで、分化移行期の遺伝子発現制御機構を明らかにする。次に、CRISPR/Cas9システム利用したゲノム編集によりSerinc5のエクソンすべてを欠失させたKOマウスを作製し、成長板軟骨形成や骨成長などの表現型を骨格標本による検索、病理組織学的解析、ISH法による分化マーカー遺伝子の検討により行う。KOマウスが胎生致死となる場合は、floxマウスを入手しCol2a1-CreマウスまたはPrrx1-Creと交配させることで軟骨細胞または間葉系幹細胞に特異的な遺伝子KOマウスを作製し解析を行う予定である。また、KOマウスから初代培養軟骨細胞または肢芽細胞を採取し、In Vitroにおける軟骨細胞分化能の評価をRT-qPCRで検討する。 ①と同時進行で②scATAC-seqによるクロマチンレベルでの遺伝子発現解析を引き続き行う。RパッケージSignacを用いて細胞フィルタリング、次元圧縮、クラスタリングを行い細胞種特異的発現を示すマーカー遺伝子のATAC-seqピークパターンを確認する。さらに、scRNAseq解析から同定した細胞種クラスターをscATC-seqデータ上に写像することで、移行期の軟骨細胞に特異的な遺伝子と遺伝子近傍のオープンクロマチン領域を同定し、遺伝子発現とエピゲノムが軟骨細胞分化に伴ってどのように連携していくかを明らかにする。
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