研究課題
免疫機能の中心的役割を担うマクロファージ(Mφ)には複数のサブタイプが存在し,様々な疾患の病態形成に関与することから,Mφをターゲットとする治療開発が進められている。一方,基底膜の主要構成成分であるラミニンはα鎖(1-5)/β鎖(1-3)/γ鎖(1-3)の組み合わせにより現在16種類以上のアイソフォームが報告され,多種多様な細胞の接着足場となる。そのラミニン受容体であるインテグリンはα鎖(3, 6, 7)/β鎖(1, 4)をもち,各ラミニンタイプへの結合特異性は異なることが知られている。本研究では,「組織特異的に発現するラミニンアイソフォームは異なるMφ表現型の誘導に関与する」という仮説を立て,その誘導メカニズムを「ラミニンとインテグリンを介した細胞結合特異性」から解明し, 誘導因子を同定することを目的としている。これによりラミニンの炎症・免疫系に対する新たな機能を発掘し,Mφを標的とする医療開発の基盤とすることを目的としている。R5年度は、R4年度に得られた特徴的な所見、すなわち、ラミニンα2鎖と最も親和性の高いインテグリンα7の結合により制御されるマクロファージの表現型について、そのシグナルを中心に解析し、興味ある知見を得ることができている。一方で、ラミニンα2鎖に対して弱いながらも親和性を有するインテグリンα6については、その機能を阻害しても顕著な変化が見られないことから、インテグリンα7とは全く異なったシグナルが機能していることが示唆された。これらの結果は、さらに解析を進めることにより、新たな免疫療法の基盤となる可能性があると考えている。
2: おおむね順調に進展している
α2鎖含有ラミニンアイソフォーム上で培養したTHP-1マクロファージにおいて、そのアイソフォームに、最も親和性の高いインテグリンα7の機能を阻害することで、全く異なる表現型の細胞に分化することが示された。令和5年度では、その際のシグナル伝達について解析し、その分化のメカニズムを一定程度明らかにすることができた。また、そこでは、生体内に最も広く分布するとされるα5鎖含有ラミニンアイソフォームとは、全く異なるシグナルが機能している可能性が示された。ラミニンアイソフォームとラミニン関連インテグリンの間には、単に物理的な細胞の結合を超えた、これまでに知られてないそれぞれに異なる機能を有していることが示唆された。
これまで得られたデータは、R6年度に開催される学術大会、及びシンポジウムで発表する予定であり、また、R6年度内には、国際誌への投稿・採択を計画している。平行して、引き続き他のラミニンアイソフォームの影響について解析を進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
iScience
巻: 27 ページ: 1-22
10.1016/j.isci.2024.108798.
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