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2023 年度 実績報告書

酸化ストレスを標的とした象牙質/歯髄複合体の加齢変化の機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H03270
配分区分補助金
研究機関九州大学

研究代表者

前田 英史  九州大学, 歯学研究院, 教授 (10284514)

研究分担者 友清 淳  北海道大学, 歯学研究院, 教授 (20507777)
濱野 さゆり  九州大学, 歯学研究院, 助教 (40757978)
糸山 知宏  九州大学, 大学病院, 助教 (50884433)
小幡 純子  九州大学, 歯学研究院, 助教 (70759448)
杉井 英樹  九州大学, 歯学研究院, 助教 (80802280)
長谷川 大学  九州大学, 大学病院, 講師 (20757992)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード歯髄細胞 / 老化
研究実績の概要

ヒトは、加齢に伴い象牙質の石灰化が亢進し歯髄腔の狭小化が亢進するが、これをマウスで確認した。老化モデルマウスであるSAMP6は、コントロールのSAMR1マウスと比較して、週齢と共に切歯の歯髄腔が狭小化することが確認できた。このメカニズムを解明するために、我々は酸化ストレスによる老化の亢進が関与すると仮説を立てた。
ミトコンドリアに局在し、活性酸素の分解酵素であるSuperoxide Dismutase 2 (SOD2)の発現を、siRNAによって抑制したヒト歯髄細胞において、活性酸素の上昇を確認した。この細胞は、老化マーカーであるp16, p21, p53ならびにSA-betaGalの発現が亢進し、SOD2の発現抑制が歯髄細胞の老化を誘導することが示唆された。さらに、象牙芽細胞誘導培地での培養によって、石灰化が亢進したが、この培養系にp53インヒビターを投与することで、石灰化が抑制されたことから、SOD2の下流にp53があり、老化および石灰化を制御することが示唆された。
また、ヒト歯髄細胞の老化の解析を加速させるため、抗がん剤で、細胞老化を促進することが報告されているエトポシドを用いて解析を行った。その結果、上記の老化マーカーの発現が亢進し、老化が促進したことが明らかになった。さらに老化した歯髄細胞は象牙芽細胞誘導培地で培養することで、象牙芽細胞分化が亢進することが明らかになった。この結果は、2024年第160回日本歯科保存学会学術大会で発表予定である。
以上より、歯髄細胞の老化によって、象牙芽細胞分化が亢進し、これに酸化ストレスが関与する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

高齢者の抜歯例が非常に少ないため、想定したようには解析が進んでいない。

今後の研究の推進方策

SOD2、mTORC1およびp53の発現の比較解析
若齢と高齢マウスの歯髄および象牙芽細胞におけるSOD2発現解析し、mTORC1については、その構成タンパクであるRaptorの発現、ならびにmTORC1によって誘導されるp53の発現を比較解析する。また、老化に伴うミトコンドリアの活動性とSOD2発現および活性の解析を主軸として、その前後のシグナルについて動的解析を進める。
mTORC1およびSOD2の象牙芽細胞の加齢への影響の解析
mTORC1の発現を抑制した歯髄細胞を用いて、SOD2活性の確認のため、スーパーオキシドの発現およびH2O2の発現について、それぞれ、MitoSOX Red Mitochondrial Superoxide IndicatorおよびDetectX Hydrogen Peroxide Detection Kitを用いて明らかにする。加えて、酸化ストレスの解消をみるために、SOD2の下流で、H2O2の分解に働くカタラーゼの活性についてもCatalase Colorimetric Activity Kitを用いて解析する。また、mTORC1の発現を抑制した、高齢マウスからの歯髄細胞を用いて、p53の発現抑制の確認と、この細胞を象牙芽細胞誘導培地にて培養し、象牙芽細胞関連因子(DMP1, DSPP, Nestin, Osteocalcin, Osteopontin)の遺伝子発現および石灰化への影響について解析する。また、この系にp53発現ベクターを導入して、石灰化への改善をみるレスキュー解析を行う。
SOD2を起点とした加齢に関わるシグナル因子の検出
歯髄・象牙芽細胞の加齢変化において、SOD2の抑制によって、その下流で働くと考えられる「老化関連シグナル」について明らかにする。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 根尖孔穿通への熱処理ニッケルチタンファイルと Tri Auto ZX2 新駆動方式の応用2024

    • 著者名/発表者名
      山下 大輝, 友清 淳, 濱野 さゆり, 前田 英史.
    • 雑誌名

      日歯内療誌

      巻: 45 ページ: 34-40

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dopamine is involved in reparative dentin formation through odontoblastic differentiation of dental pulp stem cells.2023

    • 著者名/発表者名
      Fujino S, Hamano S, Tomokiyo A, Sugiura R, Yamashita D, Hasegawa D, Sugii H, Fujii S, Itoyama T, Miyaji H, Maeda H.
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: 13 ページ: 5668

    • DOI

      10.1038/s41598-023-32126-1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Hyaluronic Acid Induction Promotes the Differentiation of Human Neural Crest-like Cells into Periodontal Ligament Stem-like Cells.2023

    • 著者名/発表者名
      Alhasan MA, Tomokiyo A, Hamano S, Sugii H, Ono T, Ipposhi K, Yamashita K, Mardini B, Minowa F, Maeda H.
    • 雑誌名

      Cells

      巻: 12 ページ: 2743

    • DOI

      10.3390/cells12232743

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 画像解析を用いたiPS細胞の品質評価の検討2024

    • 著者名/発表者名
      濱野さゆり, 井浦陽介, 山下大輝, 本村絢, 杉浦梨紗, 前田英史
    • 学会等名
      第23回日本再生医療学会総会
  • [学会発表] BMP4によるヒト歯根膜細胞の幹細胞転換の可能性2024

    • 著者名/発表者名
      長谷川大学, 田下滉大 , Kidsen Huang , 兼子大志, 前田英史
    • 学会等名
      第23回日本再生医療学会総会
  • [学会発表] c-Jun N-terminal kinase阻害剤を用いた歯周組織再生過程における抗炎症作用の検討2024

    • 著者名/発表者名
      兼子大志、長谷川大学、糸山知宏、門脇正敬、前田英史
    • 学会等名
      第23回日本再生医療学会総会
  • [学会発表] AhRシグナルの活性化はヒト歯根膜細胞のMMP12発現を亢進する2023

    • 著者名/発表者名
      門脇正敬、友清淳、糸山知宏、長谷川大学、濱野さゆり、杉井英樹、前田英史
    • 学会等名
      第158回日本歯科保存学会春季学術大会
  • [学会発表] iPS細胞由来歯根膜幹細胞様細胞の分化誘導におけるFibrillin-2の役割2023

    • 著者名/発表者名
      濱野さゆり、山下大輝、糸山知宏、友清淳、長谷川大学、杉井英樹、兼子大志、Bara Mardini、前田英史
    • 学会等名
      第158回日本歯科保存学会春季学術大会
  • [学会発表] The 4-META/MMA-TBB Resin Containing Nano Hydroxyapatite Regenerates Wounded Periodontal Tissue At The Perforation Site.2023

    • 著者名/発表者名
      Sugii S, Yoshida S, Hamano S, Hasegawa D, Obata J, Itoyama T, Albougha MS, Minowa F, Tomokiyo A, Maeda H.
    • 学会等名
      The 22nd Scientific Congress of Asian Pacific Endodontic Confederation.
    • 国際学会
  • [学会発表] Cadherin-2はヒト歯根膜細胞の幹細胞転換に関与する2023

    • 著者名/発表者名
      長谷川大学、田下滉大、Kidsen Huang、兼子大志、前田英史
    • 学会等名
      第159回日本歯科保存学会秋季学術大会
  • [学会発表] Exosomes from human periodontal ligament stem cells promote bone healing.2023

    • 著者名/発表者名
      Albougha MS, Sugii H, Tomokiyo A, Hamano S, Hasegawa D, Yoshida S, Obata J, Itoyama T, Kaneko H, Kadowaki M, Kinoshita K, Maeda H
    • 学会等名
      The 71st Annual Meeting of Japanese Association for Demtal Research
    • 国際学会
  • [学会発表] Superoxide Dismutase 2の発現抑制が歯髄細胞の老化に及ぼす影響2023

    • 著者名/発表者名
      糸山知宏、前田英史
    • 学会等名
      第46回日本基礎老化学会大会

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公開日: 2024-12-25  

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