研究課題/領域番号 |
22H03271
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
友清 淳 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (20507777)
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研究分担者 |
前田 英史 九州大学, 歯学研究院, 教授 (10284514)
糸山 知宏 九州大学, 大学病院, 助教 (50884433)
和田 尚久 九州大学, 大学病院, 教授 (60380466)
小幡 純子 九州大学, 歯学研究院, 助教 (70759448)
杉井 英樹 九州大学, 歯学研究院, 助教 (80802280)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | バイオミメティクス / 神経堤細胞 / 歯根膜幹細胞 / ナノファイバーメッシュ / 低分子化合物 |
研究実績の概要 |
バイオミメティクスは、自然や生物の持つ構造や機能を模倣し、人工物へ応用する科学技術である。2012年に国際標準化機構 (ISO) は、バイオミメティクスの発展が期待できる分野に「自己治癒・修復」を挙げた。したがって、バイオミメティクスを応用し歯周組織発生過程を模倣することは、歯周組織の治癒・修復へと繋がることが予想される。申請者はこれまでに、低分子量ヒアルロン酸が神経堤細胞の歯根膜幹細胞分化を誘導すること、および高分子量ヒアルロン酸はこの分化を誘導しないことを明らかにしてきた。本年度は、エレクトロスピニング技術を応用することで作成した低分子量ヒアルロン酸含有メンブレンを神経堤細胞株であるSK-N-SHと培養し、その歯根膜幹細胞分化誘導能について評価を行った。その結果、ヒアルロン酸非含有メンブレンでは歯根膜幹細胞分化が誘導されなったが、ヒアルロン酸含有メンブレンでは、ヒアルロン酸の単独投与と同様に分化誘導が確認された。またヒアルロン酸含有メンブレンでは、SEMでの観察により、膜表面にヒアルロン酸様構造物が確認され、さらにELISAの結果より、ヒアルロン酸含有メンブレンから低分子量ヒアルロンが溶出することが確認された。本実験結果を英文雑誌へと投稿し、受理に至った(Hyaluronic Acid Induction Promotes the Differentiation of Human Neural Crest-like Cells into Periodontal Ligament Stem-like Cells. Alhasan MA, Tomokiyo A, Hamano S, Sugii H, Ono T, Ipposhi K, Yamashita K, Mardini B, Minowa F, Maeda H. Cells. 2023)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞を用いたマイクロアレイ解析の結果から、ヒアルロン酸シグナルに着目し、さらに低分子量ヒアルロン酸が神経堤細胞の歯根膜幹細胞分化に重要であることを見出した。この低分子量ヒアルロン酸を含有する吸収性メンブレンを作製し、その機能を明らかにした内容を英文雑誌に投稿することができた。その一方で、低分子化合物に関しては、その分化誘導能に直結するシグナルを明らかにできておらず、今後の検討事項であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
低分子量ヒアルロン酸含有吸収性メンブレンの作製に成功し、さらにin vitroにおいてそれらがヒト神経堤細胞株の歯根膜幹細胞分化を促進することを明らかにすることができた。したがって、次年度はこのメンブレンを歯周組織破壊動物実験モデルへと移植し、その歯周組織再生能を評価することを計画している。 また、低分子化合物に関しては、歯根膜幹細胞分化を誘導するシグナルを明らかにするために、低分子化合物添加前後の細胞における遺伝子発現をマイクロアレイ解析にて比較し、パスウェイ解析にてシグナルを検証することを計画している。
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