研究課題/領域番号 |
22H03283
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
黒嶋 伸一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (40443915)
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研究分担者 |
松本 拡高 長崎大学, 情報データ科学部, 准教授 (90782045)
大塚 正人 東海大学, 医学部, 教授 (90372945)
井上 剛 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (30821665)
住田 吉慶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (50456654)
大庭 伸介 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (20466733)
佐々木 宗輝 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10706336)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 薬剤関連顎骨壊死 / マクロファージ / 1細胞解析 / 極性変化 / BRONJ / DRONJ / 細胞療法 / 病態形成機構 |
研究実績の概要 |
薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)は希少性かつ難治性の硬軟組織疾患だが,実に様々な薬剤がMRONJを惹起することが報告されている.臨床現場では以前にも増して混乱が生じているが,確定的な治療法開発には,MRONJの起因薬剤に左右されない標的細胞の探索・同定と,MRONJに対する病態形成機構の解明が必要不可欠である.研究代表者はMRONJモデルマウスとMRONJレスキューマウス/ラットを複数開発し,MRONJにはマクロファージ(MΦ)が関与する可能性を見出してきた.しかしMΦには多くのサブタイプが存在し,各々が異なる分化経路を辿る全く異なる細胞であるということも近年解明されつつある.本研究課題は,開発したモデルマウスに1細胞解析,ゲノム編集およびRNA干渉技術を応用してMΦのヒエラルキー決定と分子・遺伝子機構探索からMRONJの病態形成機構を解明し,マウスとヒトMRONJの共通情報抽出から新規治療法開発の基盤となるデータベースの構築を目的とした. 当該年度では,MRONJステージ0様病変モデルマウスを2つ作製することに成功し,論文化した(Kozutsumi R et al. Calcif Tissue Int. 2022,Kanako H et al. J Clin Med. 2023).また,MRONJモデルマウスにM2マクロファージを移植して治癒寛解が起こることを明らかにして,現在論文投稿中である.一方,1細胞解析については,抜歯部周囲からマクロファージだけを抽出することが困難であることが予備実験から明らかとなっため,現在抜歯部周囲組織に存在する全細胞を採取する予備実験を展開し,ついに生存率が90%以上で,10000細胞以上の生細胞を採取することに成功した.さらに研究分担者の大塚が現在,標的マクロファージを欠損させることが可能な遺伝子改変マウスを作製している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種類の新規MRONJモデルマウスの開発に加え,MRONJモデルマウスに対するマクロファージ移植療法も成功したモデルマウスも作製でき,さらには,MRONJ様病変から1細胞解析に必要不可欠な高い生存率を有する細胞群の採取を行うことができたため,(2)おおむね順調に進展している,とした.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者が開発してきたBP製剤,Dmab,VmabによるMRONJ様病変モデルマウス,細胞療法や薬剤休止によるレスキューモデルマウス,ならびに薬剤を投与しない抜歯後正常治癒マウスの8種類を用い,MRONJ部位から細胞生存率が90%で全細胞を採取する.採取した細胞群はフローサイトメーターにより,マクロファージの割合と生存率を調査する.時間軸には抜歯直後,抜歯後2週と4週(MRONJ診断時期)を設定する.MΦのscRNA-seq)とクラスタリング・アノテーション解析,発現変動解析と細胞存在数変動解析,トラジェクトリー(細胞系譜推定)解析,RNAベロシティ解析,リガンド・レセプター解析などのバイオインフォマティクス解析)からデータを取得し,投与薬剤や治療法に左右されないMΦを候補として複数選択する.その後,開発済みモデルマウスにおける候補MΦの組織内分布解析と,培養樹立した候補MΦをBRONJモデルへ移植してその効果(悪化か治癒)を検討し,MRONJの病態形成と組織治癒に重要なMΦを決定する.一方,1細胞解析の遂行とともに,各モデルマウスに対するMRONJ様病変部位の,3次元的構造解析,組織病理学的解析,免疫病理学的解析,タンパク質解析,ならびに生化学的解析なども詳細かつ網羅的に行う.特にマクロファージのサブタイプが多く存在し,それぞれに対する特異抗体も豊富に存在していることから,マクロファージに対する詳細な検討を行う.
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