研究課題/領域番号 |
22H03296
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山田 亜矢 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (40295085)
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研究分担者 |
吉崎 恵悟 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10507982)
福本 敏 九州大学, 歯学研究院, 教授 (30264253)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 歯 / エナメル質 / NFkB / 免疫 |
研究実績の概要 |
歯の発生は、唾液腺などと同様に、上皮細胞と間葉細胞の相互作用によって行われる。この過程において、EDAなどの増殖因子が作用していることが明らかになり、本分子やその受容体(EDAR)の遺伝的変異が、歯の先天性欠損を生じることが知られている。EDAの細胞内シグナルは、NFkB経路を介しているが、この経路は免疫機能の維持にも重要なシグナルであり、NFkB経路の一部の異常は歯の先天欠如とともに免疫不全を生じることも解っている。そこで本研究では、歯の発生と免疫機構の共通システムを明らかにすることを目的としている。そこでNFkB経路がどのように歯の形成に関わっているかを明らかにする目的で、関連する分子の歯の発生段階での発現を免疫組織学的に検討した。 NFkB経路のp50, p52, NIK ,RelAおよびRelBのE14.5日の歯胚での発現を検討した結果、いずれの分子も歯の上皮細胞で強い発現を示した。scRNAseq解析においても同様の結果が得られた。次にp50欠損マウスおよびNIKの変異マウスであるaly/alyマウスの歯の表現系を検討した結果、いずれのマウスにおいても歯の形態に異常は認められなかった。一方で、両遺伝子変異マウスを掛け合わせたマウスでは、矮小歯を呈することが明らかとなった。これらマウスの歯胚での遺伝子発現の変化を検討した結果、上皮細胞に発現しているshh分子の異常が認められた。このことから、NFkB経路が歯胚においてshh発現を制御し、歯の大きさの制御に関わっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯の先天欠如の原因分子であるEDAおよびその受容体のEDARの下流分子であるNKkB経路のほぼ全ての分子において、免疫組織学的検討により歯胚での発現局在を明らかにすることができた。またscRNAseqを用いた新しいスクリーニングにおいても、これらの分子が歯原性上皮細胞に発現していることが確認できた。このことから関連する分子群のほぼ全ての歯胚での発現パターンを網羅することができ、本研究を遂行する上での基本情報を集積することができた。 さらに本研究の開始時点で、aly/alyマウスとp50欠損マウスの掛け合わせにより、歯の表現系変化が認められることを把握していたが、どのようなメカニズムで歯の形成異常が生じるのか不明であった。今回、単独の遺伝子欠損マウス、両方の遺伝子変異マウスとの比較により、歯胚においてshhの発現異常を見出すことができ、shh発現の変化による歯胚形成の異常もある程度把握することができた。 一方で、NFkB経路は、一部の分子において歯胚の間葉細胞にも発現していることを確認しており、これら分子が象牙質形成や、歯髄幹細胞の維持にどのように関与しているかは未だ不明であり、今後の課題の一つである。以上のことから、歯原性上皮細胞においては初年度予定していた結果は十分に得られたが、間葉細胞における新たな課題も見つかったことから、「概ね順調に進展している」と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
EDAシグナルの下流分子であるNFkB経路の歯胚発生における役割について、p50およびNIKがshh発現を制御し、歯の大きさの決定に重要であることを見出した。しかしながらshhは歯の咬頭形成やエナメル質形成に関わっていることが知られているが、歯の大きさの制御への関与に関しては未だ不明である。そこで下記の実験計画を立案し、shhシグナルによる歯胚の大きさの制御機構を明らかにする。 1)歯胚器官培養を用いてshhの発現をsiRNAを用いて抑制し、その際の歯胚内での遺伝子発現変化をRNAseqを用いて網羅的に解析する。同様にp50およびNIKについても同様の手法で遺伝子発現抑制を行い、遺伝子欠損マウスの表現系との比較を行う。 2)NFkB経路関連分子群のエナメル質形成への影響を評価するために、我々の研究室で樹立した歯原性上皮細胞株SF2を用いて、NT-4やTGF-bによる分化誘導刺激において、NFkB経路関連分子群の発現変化を検討し、AMELやAMBNなどのエナメル基質発現への関与を明らかにする。 3)NFkB経路関連分子群の歯胚の間葉細胞への影響を検討するために、歯原性間葉細胞株mDPにて、人工的なMSC誘導技術を用いて、mDP由来MSC細胞の免疫抑制機構の解明を行う。
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