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2022 年度 実績報告書

顎顔面領域先天性疾患の骨リモデリングを規定するエピゲノム制御機構の統合的理解

研究課題

研究課題/領域番号 22H03297
配分区分補助金
研究機関岡山大学

研究代表者

井澤 俊  岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (30380017)

研究分担者 加治屋 幹人  広島大学, 病院(歯), 教授 (00633041)
早野 暁  岡山大学, 大学病院, 講師 (20633712)
上岡 寛  岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (80253219)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードエピゲノム / 破骨細胞 / マクロファージ / シグナル伝達
研究実績の概要

エピゲノムはDNAあるいはヒストンへの後天的な化学修飾によりゲノムDNAからの情報読み出しを調節するメカニズムである。エピゲノムによる顎顔面領域骨代謝メカニズムを解明することは先天性疾患の症状や病態把握と発達予後予測に重要な研究となる。また、若年性関節リウマチ患者においては成長中の下顎頭骨破壊が顎変形症の原因となる可能性が指摘され、矯正治療中に発症した場合には当初の治療が達成できないなど大きな問題となることが多い。したがって、病的状況下を含め頭蓋顎顔面におけるエピゲノムによる骨リモデリング機構を解明することが矯正歯科臨床の一助となりうることから、その基礎的背景を明らかにすることが重要となる。そこで、ASXL1(additional sex comb like 1)、AhR(aryl hydrocarbon receptor)などエピジェネティック制御因子を基軸にマクロファージから破骨細胞分化に伴う細胞内代謝状態に変化がみられた。特に、ミトコンドリア生合成に伴うシグナル伝達経路の一つであるc-Fos、CREBのリン酸化、PCG-1bといった分子やシグナル伝達経路の破綻を認めた。破骨細胞の細胞内様式は、一見M2マクロファージと似ているが、その役割はほとんど明らかにされていない。そこでASXL1のマクロファージから破骨細胞分化に伴う細胞内代謝状態の変化に対する役割、代謝リプログラミングをメタボローム解析や破骨細胞の分化過程で取得したChIP-seq、RNA-seq、トランスクリプトームデータを用いて詳細に解析する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までの進捗状況として、ASXL1ノックダウン破骨細胞のエネルギー代謝を担うミトコンドリアの形態やマーカーの異常を認めたことより、破骨細胞分化に必須のサイトカインであるRANKL(receptor activator NF-kB ligand)シグナルあるいはM-CSF(macrophage colony stimulating factor)シグナルの両面から、グルタミン酸代謝経路の破綻に着目し、その他の各種シグナル伝達経路についても詳細な解析を行っている。予備的な結果ではあるが、M-CSF刺激ではなくRANKL刺激においてMAPKキナーゼカスケードやNF-kBシグナルカスケードに有意差を認めた。破骨細胞は骨を壊すだけでなく、骨を修復する骨芽・骨細胞を活性化して、その分化・機能を促すカップリング因子の存在が知られており、骨疾患治療の際には、破骨細胞の数を減らしすぎると骨の修復ができなくなり、逆に骨が脆くなってしまう問題がある。最近、破骨細胞のライブイメージングによって、破骨細胞にも実際に骨を吸収している活動的な細胞と、していない休止期の細胞が存在することが明らかとなった。今回解析中のASXL1を介した関節炎モデルマウスにおけるR/N比をインビボイメージングによって同定することで骨リモデリングのメカニズム解明や創薬への応用を目指している。

今後の研究の推進方策

研究代表者によって構築されたマウスのコラーゲン誘導性関節炎モデルを用いた本研究課題で得られた知見や新規細胞または新規因子を、研究分担者の加治屋によって構築された口腔オルガノイドモデルに組み込み、進化型実践口腔オルガノイドを作製しスクリーニング、薬剤効果の検証を実施する。さらには、マウスコラーゲン誘導関節炎モデルなどの病的状況下での近年同定されたヘルパーT細胞中のTh17サブセット、M1・M2マクロファージ、樹状細胞のサブセットにも焦点を絞って解析を行うことで、骨組織の修復を促す統一原理の解明、診断や治療法の開発を最終目標とする。また、Ex vivoにて標識移入した破骨細胞前駆細胞がレシピエントマウスにおいて脾臓やリンパ節など免疫系臓器を中心とした各臓器への遊走を観察するために、シアン系近赤外線蛍光組織で標識した破骨細胞の集積状況を移入直後から経時的に観察し関節炎病態との関連性を探る。以上の内容の実験を遂行する上ではハード面、ソフト面ともに問題はない。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] ThPOK inhibits osteoclast formation via NFATc1 transcription and function2022

    • 著者名/発表者名
      Zou Wei, Izawa Takashi, Rohatgi Nidhi, Zou Steven Y, Li Yongjia, Teitelbaum Steven L
    • 雑誌名

      JBMR Plus

      巻: 5 ページ: e10613

    • DOI

      10.1002/jbm4.10613

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] HIF-1α controls palatal wound healing by regulating macrophage motility via S1P/S1P1 signaling axis2022

    • 著者名/発表者名
      Hutami Islamy R, Izawa Takashi, Khurel-Ochir Tsendsuren, et al.
    • 雑誌名

      Oral Diseases

      巻: 28 ページ: 1157-1169

    • DOI

      10.1111/odi.13856.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 内分泌撹乱物質AhRリガンドBaPはCyp1a1シグナルを介して破骨細胞分化および骨代謝を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      井澤 俊, 吉川 友理, 浜田勇作, 上岡 寛
    • 雑誌名

      日本骨形態計測学会雑誌

      巻: 41 ページ: 78-79

  • [学会発表] 内因性AhRリガンドFICZによるCyp1a1を介した破骨細胞分化および骨代謝調節機構の解析2023

    • 著者名/発表者名
      吉川友理、井澤俊、上岡寛
    • 学会等名
      第7回日本骨免疫学会
  • [学会発表] 喫煙によるアリルハイドロカーボン受容体を介した口蓋粘膜創傷治癒破綻メカニズムの解明2022

    • 著者名/発表者名
      井澤俊、浜田勇作、吉川友理、上岡寛
    • 学会等名
      第46回日本口蓋裂学会総会・学術集会
  • [学会発表] RANKLとIGFBPシグナルクロストークによる破骨細胞分化および骨代謝機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      浜田勇作、井澤俊、吉川友理、上岡寛
    • 学会等名
      第42回日本骨形態計測学会
  • [学会発表] 内因性AhRリガンドFICZによるCyp1a1を介した破骨細胞分化および骨代謝調節機構の解析2022

    • 著者名/発表者名
      吉川友理、井澤俊、浜田勇作、上岡寛
    • 学会等名
      第64回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] 喫煙によるアリルハイドロカーボン受容体を介した口蓋粘膜創傷治癒破綻メカニズムの解明2022

    • 著者名/発表者名
      浜田勇作、井澤俊、吉川友理、上岡寛
    • 学会等名
      第64回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] アリルハイドロカーボン受容体を介した破骨細胞分化および骨折治癒機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      吉川友理、井澤俊、浜田勇作、上岡寛
    • 学会等名
      第81回日本矯正歯科学会学術大会&第9回日韓ジョイントシンポジウム
  • [学会発表] 喫煙によるアリルハイドロカーボン受容体を介した口蓋粘膜創傷治癒破綻メカニズムの解明2022

    • 著者名/発表者名
      浜田勇作、井澤俊、吉川友理、上岡寛
    • 学会等名
      第81回日本矯正歯科学会学術大会&第9回日韓ジョイントシンポジウム

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公開日: 2023-12-25  

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