研究課題/領域番号 |
22H03302
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
沢 禎彦 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (70271666)
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研究分担者 |
加藤 幸成 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00571811)
寺町 順平 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (20515986)
坂上 竜資 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (50215612)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 歯周病 / 糖尿病 / 糖尿病性腎症 / P. gingivalis / F. nucleatum / エクソソーム |
研究実績の概要 |
本研究は歯周病を有する糖尿病環境の口腎エクソソーム連関による腎症と糖尿病増悪の分子機構の解明を目的とする。すなわち、糖尿病腎糸球体・尿細管では、歯周病感染組織エクソソームの内包する炎症・病原性因子に高血糖刺激で発現の亢進した細胞内受容体が過剰応答することで糸球体の慢性炎と硬化症が促進し尿細管間質性炎を誘発、SGLT2過剰発現による糖尿病増悪連鎖が合して複雑系を形成すること、TLRなど歯周疾患エクソソーム内包物受容体のSNPが腎症に至る責任遺伝子、すなわち腎症合併と糖尿病増悪連鎖の個人差の遺伝的背景となる仮説を分子疫学的に検証する。本年度は、ヒト・マウス口腔組織由来線維芽細胞・上皮細胞の歯周病原菌成分添加培養上清を収集し、超遠心分離、ポリマー沈殿、エクソソームマーカーCD9/CD63/CD81特異抗体を用いた免疫沈降法で培養細胞由来エクソソームを分離することができた。このエクソソームをヒト・マウス培養血管内皮細胞・近位尿細管細胞に投与、IFNβ/γ、TNFα、IL-6分泌量の増大、TLR7/8/9活性化信号の増加、およびNF-kB, IRF3など関連転写因子の核内移行を確認することができた。さらに、エクソソームcargo物質のマイクロフルイディック分析と核酸・蛋白マイクロアレイにて蛋白・microRNAを特定中である。また、Streptozotocin投与膵島β細胞破壊型I型糖尿病ICRマウス頬粘膜下に歯周病原菌成分を投与した腎症群のTLR7/8/9発現増大を確認することができた。さらには、収集したエクソソームを蛍光標識して糖尿病マウス尾静脈に投与後、蛍光標識エクソソームのマウス腎組織内分布を検索することができた。以上について現在論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度計画は概ね順調に施行された。In vitroモデルとして、歯周病原細菌成分ストレス特異的に口腔組織細胞の放出するエクソソームが血管内皮細胞・近位尿細管細胞を活性化することを証明することについて、ヒト・マウス口腔組織由来線維芽細胞・上皮細胞のP. gingivalis/F. nucleatum全菌体成分添加培養上清を収集し培養細胞由来エクソソームを分離することができた。また、エクソソームcargo物質のマイクロフルイディック分析と核酸・蛋白マイクロアレイにて蛋白・microRNAを特定する作業に入った。さらに、エクソソームをヒト・マウス培養血管内皮細胞・近位尿細管細胞に投与、IFNβ/γ、TNFα、IL-6分泌量の増大、TLR7/8/9活性化信号の増加、およびNF-kB, IRF3など関連転写因子の核内移行を確認することができた。In vivoモデルとして、口腔組織細胞の放出する歯周病原細菌成分ストレス特異的エクソソームの循環系投与が糖尿病マウス腎に炎症反応を起こすことを証明する実験では、Streptozotocin投与膵島β細胞破壊型I型糖尿病ICRマウスの腎症群のTLR7/8/9発現増大確認することができた。現在、マウス腎組織を回収してエクソソーム解析に入っている。すなわち、収集したエクソソームを蛍光標識して糖尿病マウス尾静脈に投与後、蛍光標識エクソソームのマウス腎組織内分布を検索した結果、腎糸球体・近位尿細管のみならず遠位尿細管や腎髄質にも顕著なエクソソーム集積と、これに伴う白血球接着因子、TLRの発現が起こることが明らかとなった。以上から、歯周病細菌と反応した口腔細菌が歯周病細菌成分含有エクソソームを放出し、これが腎に集積する可能性が見出され、概ね計画は順調に行われたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroモデルとして、歯周病原細菌成分ストレス特異的に口腔組織細胞の放出するエクソソームが血管内皮細胞・近位尿細管細胞を活性化することを証明することについては、ヒト・マウス口腔組織由来線維芽細胞・上皮細胞のP. gingivalis/F. nucleatum 全菌体成分添加培養上清エクソソームを分離、凍結融解とサポニン膜透過処理したエクソソームcargo物質のマイクロフルイディック分析と核酸・蛋白マイクロアレイにて蛋白・microRNAを特定する作業を完遂し、原因遺伝子の解明に繋げたい。また、エクソソームをヒト・マウス培養血管内皮細胞・近位尿細管細胞のみならず、末梢血CD4+/8+ T細胞, CD19+ B細胞, CD14+ 単球細胞に投与、IFNβ/γ、TNFα、IL-6分泌量の増大、TLR7/8/9活性化信号の増加、およびNF-kB, IRF3など関連転写因子の核内移行を確認する作業を完遂し、免疫細胞活性化の責任遺伝子の解明に繋げる。透析患者の疫学解析で、アンケート・問診・カルテによる後向きコホート調査、歯周検査を合わせた横断研究についてのみ、コロナの社会情勢により研究協力が極めて制限されてきたため、献体数が不足しており、5類移行後に積極的に病院に協力を打診したい。アンケート・問診結果が概ね満足する献体数に到達後、糖尿病性腎症のTLR系列遺伝子とエクソソームmiRNAの発現量の有意差ならびにSNPの有無、歯周疾患キャリア・責任遺伝子との相関を証明するため、GWASクラスタリング解析を推進していく予定である。
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