研究課題
本研究開発の目標は、生まれながらに有する心不全発症リスクを、背景疾患別クラスタリングを含んだ1次元のスコアで表現可能にし(心不全多遺伝子リスクスコア:Polygenic Risk Score for Heart Failure [PRSHF])、心不全発症リスクを層別化する新たなマーカーとしての有用性を評価すること、さらに、そのリスクを低減しうる後天性環境要因(特定の薬物治療や生活習慣)を同定することである。本研究開発は我が国における、心不全に対する超精密個別化医療・予防戦略開発の契機となりうる。金沢大学・志賀町ゲノムコホートの2011年以降蓄積された心不全イベントの発症、重症度、複合的臨床情報を継続して抽出・解析を行い、臨床情報のデータベース構築を進めた。また、関連しうる後天的要因(生活習慣など)の情報収集も行った。また、心不全に関連した表現型である、心房細動などの不整脈の情報などの収集、さらには心エコー図検査に関する結果などについての情報の収集も行った。令和5年度には約5,000名に対し日本人ゲノム解析ツール「ジャポニカアレイ」を用いて約67.5万箇所のSNVをジェノタイピングしたうえで、HapMapプロジェクト日本人リファレンスゲノム配列を参照し、全ゲノム構造を疑似的に再構成(インピュテーション)を完了した。解析の過程において、心血管イベント高リスク病態としての家族性高コレステロール血症が、心不全や心房細動の罹患と有意に関連することを見出し成果について英文雑誌へと報告した。
2: おおむね順調に進展している
金沢大学・志賀町ゲノムコホートの参加者に対するジェノタイピングが完了しており、臨床データなどの収集についても概ね順調に推移している。
共同研究機関である米国Broad Institute(Amit Khera博士:研究協力者)とも協力し遺伝的連鎖不平衡を加味した民族横断的PRSHF算出を行い心不全や心房細動などのイベントとの関連解析を予定する。
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Eur J Clin Invest
巻: 54 ページ: -
10.1111/eci.14119