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2022 年度 実績報告書

うつ病の危険因子HHV-6 SITH-1がストレスレジリエンスに与える影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H03338
配分区分補助金
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

近藤 一博  東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70234929)

研究分担者 岡 直美  東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (00704503)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードストレスレジリエンス / ヒトヘルペスウイルス6 / HHV-6 / SITH-1 / うつ病 / 潰瘍性大腸炎
研究実績の概要

うつ病や潰瘍性大腸炎を含むストレス関連疾患の原因としてストレスレジリエンスの低下が重要視されている。しかし、ストレスレジリエンスは、遺伝的、生物学的、生理学的、心理学的要因が絡む複雑な現象であり、そのメカニズムには不明な点が多い。最近我々は、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が潜伏感染時に産生するタンパク質SITH-1を発見し、HHV-6 SITH-1がストレス応答を亢進させることで、うつ病の原因となることを見いだした。また、潰瘍性大腸炎に関しても、患者の約4割で抗SITH-1抗体が陽性であることを見出しており、SITH-1が潰瘍性大腸炎の増悪や何らかの病態に関係すると考えられた。本研究は、SITH-1によるストレスレジリエンス低下機構の生物学的側面を明らかにし、ストレス関連疾患予防のための分子基盤を得ることを目的とする。
今年度は、代表的なストレス関連疾患であるストレス性うつ病と潰瘍性大腸炎とHHV-6 SITH-1との関係を検討可能なマウスモデルを作成した。方法としては、SITH-1発現マウスにストレス関連疾患に関わるストレス負荷を与えることで疾患マウスを作成した。ストレス性うつ病のモデルとしては、SITH-1マウスに傾斜ケージ飼育やwater cageによる不眠などの軽いストレスを与えることで、うつ病を発症させるモデルを作成した。潰瘍性大腸炎モデルでは、デキストラン硫酸ナトリウム刺激による潰瘍性大腸炎がSITH-1によって重症化することを確認し、モデル動物を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

代表的なストレス関連疾患であるストレス性うつ病と潰瘍性大腸炎とHHV-6 SITH-1との関係を検討可能なマウスモデルを作成しすることができた。方法としては、SITH-1発現マウスにストレス関連疾患に関わるストレス負荷を与えることで疾患マウスを作成した。
ストレス性うつ病のモデルとしては、SITH-1マウスに傾斜ケージ飼育やwater cageによる不眠などの軽いストレスを与えることで、うつ病を発症させるモデルを作成した。このモデルでは、脳内での炎症性サイトカイン産生亢進も確認しており、うつ病患者の病態により近いモデルであると考えられる。
潰瘍性大腸炎モデルでは、デキストラン硫酸ナトリウム刺激による潰瘍性大腸炎がSITH-1によって重症化することを確認し、モデル動物を得ることができた。このモデルでは、デキストラン硫酸ナトリウム刺激単独で作製した潰瘍性大腸炎モデルに比べて、SITH-1が加わることで大腸の炎症や病理変化の亢進が観察され、これまでのデキストラン硫酸ナトリウム刺激モデルに比べて、重傷の潰瘍性大腸炎の病態に近いと考えられた。
これらのモデルを用いることで、ストレスレジリエンスに関する解析がさらに進むことが期待され、本研究課題の進捗は順調であると考えられる。

今後の研究の推進方策

ストレスによる疾患発症とストレスレジリエンスを評価できるマウスモデルの作製に成功したので、これらを用いた解析を行う。特に、これらのモデル動物の脳変化を解析することでストレスレジリエンス低下に関わる神経回路を同定する。方法としては、ストレス応答や自律神経にかかわる海馬、視床下部、扁桃体を中心に、神経伝達物質の産生酵素や分解酵素のタンパク質産生を、病理切片の免疫染色によって解析する。また、Real-time PCR法によって、これらの部位の活性を示す遺伝子発現を解析することで、これらのモデルマウスの脳内で生じている変化を検討し、ストレスレジリエンスに関係する脳部位や神経回路に関する知見を得る。Real-time PCRは、網羅的な検討を行うために、ストレスに関係する遺伝子に関する遺伝子パネルを有効に活用する。うつ病モデルの方は、脳内の炎症性変化や脳内の神経機能に与える影響を中心に解析を行う。潰瘍性大腸炎モデルでは、脳の変化と末梢臓器の関係を解析することも可能であるので、両者を比較検討することで、ストレスレジリエンスに関する脳の機能と、脳機能変化が末梢臓器のストレス疾患に与える影響も検討する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Suppressors of Cytokine Signaling Are Decreased in Major Depressive Disorder2022

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi N, Shinagawa S, Nagata T, Shigeta M, Kondo K.
    • 雑誌名

      J Pers Med

      巻: 12(7) ページ: 1040

    • DOI

      10.3390/jpm12071040.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] VP26, a herpes simplex virus type 1 capsid protein, increases DNA methylation in COASY promoter region.2022

    • 著者名/発表者名
      Osaka R, Kobayashi N, Shimada K, Ishii A, Oka N, Kondo K.
    • 雑誌名

      Brain Behav Immun Health

      巻: 26 ページ: 100545

    • DOI

      10.1016/j.bbih.2022.100545.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ウイルスの基礎知識-形態,感染様式などについて2022

    • 著者名/発表者名
      小林伸行、近藤一博
    • 雑誌名

      耳鼻咽喉科・頭頸部外科

      巻: 94(8) ページ: 606-610

    • DOI

      10.11477/mf.1411203083

  • [学会発表] 新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)後遺症モデルマウスの作製および病態の解析2022

    • 著者名/発表者名
      岡直美, 小林伸行, 石井梓, 近藤一博
    • 学会等名
      第18回日本疲労学会
  • [学会発表] 単純ヘルペスウイルス1型カプシドタンパクVP26によるCOASY プロモーター領域のDNAメチル化亢進2022

    • 著者名/発表者名
      小林伸行, 小坂瑠衣, 嶋田和也, 石井梓, 岡直美, 近藤一博
    • 学会等名
      第69回日本ウイルス学会
  • [学会発表] 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後遺症モデルマウスにおける脳内炎症発生メカニズムの解明2022

    • 著者名/発表者名
      岡直美, 嶋田和也, 石井梓, 小林伸行, 近藤一博.
    • 学会等名
      BPCNPNPPP4学会合同年会
  • [学会発表] 嗅球に潜伏感染したヒトヘルペスウイルス6による脳内炎症の誘導2022

    • 著者名/発表者名
      岡直美, 小林伸行, 嶋田和也, 石井梓, 近藤一博
    • 学会等名
      第69回日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] ORF152は先天性CMV感染症において神経病原性を誘導する2022

    • 著者名/発表者名
      嶋田和也, 小林伸行, 岡直美, 石井梓, 近藤一博
    • 学会等名
      第69回日本ウイルス学会
  • [備考] 東京慈恵会医科大学・ウイルス学講座

    • URL

      https://jikeivirus.jp/

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公開日: 2023-12-25  

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