研究実績の概要 |
これまで悪性中皮腫発症の背景に石綿曝露の免疫抑制作用が関わることを報告してきた。また、中皮腫患者の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)ニボルマブ治療前後の末梢血の包括的免疫機能解析を行い、部分奏効PR症例において、NKのIFN-γ 産生誘導能が高く、活性化CTLが多く、Treg細胞が多いという特徴を観察した。そこで、各免疫細胞集団が産生するサイトカインの産生プロファイルを調べ、中皮腫のニボルマブ治療効果に関わる免疫学的特徴の把握、およびその予測因子の探索を試みた。ニボルマブ治療の治療効果をPD, SD, PRと判別した。末梢血よりPBMCを調整し、蛍光標識抗体およびFACS Ariaを用いてCD4+T細胞, CD8+T細胞, NK細胞および単球を単離し、24時間培養後(単球以外はPMA, ionomycin刺激下)に培養上清を回収した。各上清中のサイトカイン29種をLuminexにより測定した。結果について主成分分析(PCA)と重回帰分析を行った。悪性中皮腫患者採血よりソートされたCD4+T細胞, CD8+T細胞, NK細胞の培養上清中のサイトカイン産生プロファイルから、PR症例において他とは異なる特徴が観察され、PCAにおいてもPR例は他と異なる座標に位置した。PR症例における両T細胞からのIL-17産生やNK細胞のIFN-γ産生は高い潜在的抗腫瘍免疫機能を意味する。他方で、予想されなかった炎症性サイトカインやケモカインの高い産生能も示されたことは、多様な免疫動態の変化とニボルマブ治療効果との関わりを示唆する。また、重回帰分析によりPD, SD, PRを予測する免疫学的スコア式が算出されたことは、ICI治療効果を予見するバイオマーカー確立の可能性を示唆する。
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