研究実績の概要 |
これまで悪性中皮腫発症の背景に石綿曝露の免疫抑制作用が関わることを報告してきた。また、中皮腫患者の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)ニボルマブ治療前後の末梢血の包括的免疫機能解析を行い、部分奏効PR症例において、NKのIFN-γ 産生誘導能が高く、活性化CTLが多く、Treg細胞が多いという特徴を観察した。そこで、各免疫細胞集団における免疫機能関連遺伝子の治療前後の発現量変動を症例間で比較し、中皮腫のニボルマブ治療効果に関わる免疫学的特徴の把握、およびその予測因子の探索を試みた。ニボルマブ治療の治療効果をPD, SD, PRと判別した。末梢血よりPBMCを調整し、蛍光標識抗体およびFACS Ariaを用いてCD4+T細胞, CD8+T細胞, NK細胞および単球を単離し凍結保存、一部は24時間培養後(単球以外はPMA, ionomycin刺激下)に凍結保存した。その結果、PR症例における治療3ヶ月後の特徴として、CTLにおけるPDCD-1の減少と刺激後のUBE2E3の増加が、NKにおけるNKp46の増加が、Thにおける刺激後のTNF-αの増加が観察された。CTLのPDCD-1発現量はGranzyme BやPerforin の刺激後の発現量と負の相関性を示し、UBE2E3はGranzyme B, Perforin, FasL と強く正に相関した。また、NKのPDCD1はNKp46, Granmzyme B, IFN-γと有意に負の相関性を示し、NKp46とGranzyme Bとは有意に正の相関性を示した。PR症例におけるCTLの細胞傷害性の亢進、およびNK細胞機能の亢進が推察される。我々はこれまでに悪性中皮腫患者末梢血リンパ球の特徴としてNK細胞におけるNKp46発現量の低下を報告してきた。PRのNK細胞におけるNKp46発現量の増加は機能回復を意味し、悪性中皮腫に対するニボルマブなどICIの治療奏効との密接な関係を示唆する。
|