研究課題/領域番号 |
22H03356
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
原田 成 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10738090)
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研究分担者 |
清水 厚志 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 教授 (30327655)
大桃 秀樹 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 特任准教授 (90453406)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | オミクス解析 / 分子疫学 / DNAメチル化解析 / メタボローム解析 / 加熱式たばこ / 新型たばこ |
研究実績の概要 |
公衆衛生学上インパクトの大きな、新規環境要因によるがん等の疾患リスクに対し、早期に適切な対策を行うために、迅速かつ信頼性のあるリスク評価手法の開発が求められている。特に、加熱式たばこは日本で使用者が急増しているが健康影響のエビデンスが少なく、迅速なリスク評価が必要である。そこで、疫学研究に網羅的解析(オミクス解析)を活用して新型たばこの疾患リスクを評価する方法を提案する。 本研究では、①地域コホートで網羅的なDNAメチル化解析を実施することで、加熱式たばこ喫煙の健康影響のメカニズムと直結した複数のメチル化マーカーを明らかにし、リスク評価を行う。特に高リスクである加熱式たばこと紙巻きたばこの併用者にも着目する。 ②有用性が明らかになったメチル化マーカーを追跡調査でも測定し、中期的な曝露によるDNAメチル化の変動を検討して因果関係を明確にする。 ③多層オミクス統合解析も実施し、新規環境要因の早期リスク評価に網羅的解析を活用するモデルケースとして展開する。 2022年度は、2018年度に収集済の検体を活用して①のDNAメチル化解析の実施を進めた。具体的には、2018年度の調査に参加した52名×4群(紙巻き、過去喫煙、非喫煙、加熱式)に併用者を加え、Infinium Methylation EPIC BeadChip Kitを用い、DNAメチル化のマイクロアレイ解析を実施し、加熱式たばこの使用および併用によるDNAメチル化の変動を網羅的に評価している。さらに、②の実施に向けて2023年度からのフォローアップ調査の立ち上げのための準備を行い、2023年度から調査を開始できる体制づくりを完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は既存検体の測定を進めるとともに、フォローアップ調査の体制づくりのための年であり、概ね目標が達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
・フォローアップ調査を実施する。(2023-2024年度) 2018年度をベースラインとしてフォローアップ調査を行い、喫煙状況を含む生活習慣や健康状態の変化を調査し、生体試料を収集する。重要なCpGサイトについて、DNAメチル化解析を実施して経年変化を明らかにする。鶴岡コホートのフォローアップ調査は、毎回70-80%の参加率であり、高い追跡率が期待できる。 ・時系列解析と、4層の網羅的統合解析を実施する。(2024-2025年度) DNAメチル化マーカーの経時的な変動を明らかにする。特に加熱式たばこ使用や併用との因果関係の明確なDNAメチル化マーカーを特定する。さらに遺伝子(ゲノム)、遺伝子発現(トランスクリプトーム)および代謝物(メタボローム)の測定済みの3層の網羅的解析と、網羅的メチル化解析(メチローム)を統合する。メディエーション解析およびネットワーク解析を用いて、4層の網羅的データを統合的に解析し、加熱式たばこの喫煙が生体内に与える影響とそのメカニズムを明らかにする。 ・"Meet-in-the-Middle"コンセプトに基づき、既存の疾患リスクに関する知見と組み合わせて、加熱式たばこの疾患リスク評価を行う。(2025年度・原田) 加熱式たばこの使用や併用によるDNAメチル化マーカーの変動と健康影響との関連を、既存の知見と組み合わせて、リスク評価を行う。さらに、4層オミクスの統合的解析モデルも用いたリスク評価も行う。リスク評価にあたっては、他のたばこの専門家ともコミュニケーションをとり、細心の注意を払って実施する。さらに、本研究で確立した手法を、新規環境要因のリスク評価を早期に行うために、網羅的解析を活用するモデルケースとして展開する。
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