研究課題/領域番号 |
22H03389
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤田 君支 九州大学, 医学研究院, 教授 (80315209)
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研究分担者 |
藥師寺 佳菜子 九州大学, 医学研究院, 助教 (40880894)
田中 さとみ 九州大学, 医学研究院, 助教 (50909299)
牧本 清子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 名誉教授 (80262559)
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (80274538)
酒井 久美子 九州大学, 医学研究院, 助教 (90778656)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 術後肺炎 / SSI / 周術期口腔ケア / 頭頸部がん / 食道がん |
研究実績の概要 |
2022年度は頭頸部がんと食道がんにおける周術期口腔ケアと術後感染性合併症との関連を明らかにするために、下記の二つの後ろ向き観察研究を実施した。 1)COVID-19流行下における周術期口腔ケアが頭頸部がん患者の術後肺炎および手術部位感染(SSI)の制御に有効かを明らかにするために、COVID-19流行前の術後感染発生率と比較した。さらに、術後感染の関連要因を検討した。方法は、2018年1月から2022年3月までの間に手術を受けた頭頸部がん患者について、診療録情報を後ろ向きに調査した結果、分析対象者213名で、術後肺炎の発生率は15.0 %、SSIは24.4%であった。COVID-19流行前後での術後感染の発生率に差はなく、コロナ禍で一部変更された口腔ケアにおいても有効に実施されていたことが示唆された。また、術後感染の予測因子をロジスティック回帰分析で検討した結果、術後肺炎には術前口腔乾燥、糖尿病など、SSIでは術後の専門的口腔ケアの未実施などとの関連が示された。 2)食道がん患者における術前の口腔衛生状態と術後感染症との関連を明らかにすることを目的とした。方法は、2017年1月から2022年3月までに全身麻酔下で手術を受けた患者を対象に、診療録情報を用いて行った。分析対象は207名で、平均年齢は66.7歳、男性が78.3%を占めた。対象期間中に術後肺炎は13.5%、SSIは17.9%発生した。ロジスティック回帰分析の結果、術前の口腔乾燥(OR=3.34, 95%CI 1.10-10.08, p=0.033)は術後肺炎と有意に関連していた。SSIと関連する術前の口腔衛生状態の項目はなかった。Cox比例ハザードモデルを用いて、術後在院日数と術後肺炎、SSIとの関連を分析した結果、Kaplan-Meier法で推定した累積退院率は、術後感染の発生の有無別に差があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19流行下で周術期口腔ケア方法が一部変更になったため、前向き調査に向けて、まずは後ろ向き調査で術後感染への影響を調査する必要があった。今年度の研究において、COVID-19流行前後での口腔ケア方法の一部変更による術後感染の発生率に統計的な有意差はないことが明らかにできたため、計画はおおむね順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の二つの後ろ向き観察研究の結果を基に、COVID-19流行後での周術期口腔ケアの有効性を確認できた。今後の研究は、対照群と介入群の設定や看護師による急性期の口腔ケア方法について、共同研究者と検討しながら計画を順調に進める予定である。
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