研究課題/領域番号 |
22H03398
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
中山 優季 公益財団法人東京都医学総合研究所, 社会健康医学研究センター, ユニットリーダー (00455396)
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研究分担者 |
清水 俊夫 公益財団法人東京都医学総合研究所, 社会健康医学研究センター, 研究員 (50466207)
小森 隆司 公益財団法人東京都医学総合研究所, 病院等連携支援センター, 研究員 (90205526)
木田 耕太 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立神経病院(臨床研究室), 脳神経内科, 医師 (30626601)
林 健太郎 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立神経病院(臨床研究室), 脳神経内科, 医師 (80650390)
森島 亮 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立神経病院(臨床研究室), 脳神経内科, 医師 (10897135)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 非運動症状 / 病変の拡がり / 自律神経障害 / データベース |
研究実績の概要 |
本研究は、筋萎縮性側索硬化症における非運動症状に対する看護ケアの確立を目的に、これまでの研究蓄積からの後ろ向きの探索研究と前向きの経過追跡の両方の手法を用い、ALS病変の拡がりに影響する要因を探索している。初年度の成果として、以下の5点を得た。 1)血液学的指標の推移:診断時、気管切開時、死亡または最終調査時点におけるTP,ALB.TC,TG.GLUの推移を調査し、ステージ進行者においては、ALBが低下し続けることを見出した。 2)自律神経機能:外来通院時期にあるALS患者29例について、仰臥位にて、MemCalcによる心拍変動測定(HRV)を安静2分間・課題1分間(100-7の計算を繰り返す)・後安静2分間計測し、各区間での平均値の3時点比較を行った。ALSFRS-Rの低下が進むほどLF/HF値が下がる傾向があること、HRが課題後に元に戻りにくいことから、自律神経の調節機能障害が示唆された。 3)人工呼吸器装着者のデータベース化: 2010年以降のA病院入院患者での人工呼吸管理の実施状況を後ろ向きに調査した。調査期間内の人工呼吸器管理実施は1033例あり、うちALSは368例、A病院の主治医例は、316例であった。 4)認知・精神機能:患者・介護者関係に最も影響を及ぼす情動制止困難について、研究協力者であるALS当事者の経験を収集し、情動調節困難(PBA)との違いとして、情動制止困難の場合には「人」がきっかけとなり生じることを確認した。 5)剖検例における肺実質の探索:10年以上の長期例における共通病変として、肺気腫、肺炎、胸膜の肥厚・線維化、血管壁の線維化、中膜平滑筋の変性を指摘し、血管病変が特徴的であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではこれまで知られてこなかったALSの非運動症状に関する4つの領域について、学会発表・論文投稿につながる成果を上げた。現状、後ろ向きの探索研究(過去起点)が主であるものの当初予定の在宅人工呼吸療法実施者のみならず、一病院における人工呼吸実施者総数よりALS療養者を抽出することが可能となり、かつてない規模のデータベース化が可能となりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
発症から呼吸器装着、或いは死亡までの進行期における前向き追跡体制を確立し、これまでの人工呼吸器装着後の追跡コホートに繋げ、全経過を通じた前向き追跡体制を確立する。そのうえで、各分担課題それぞれの目指すべき方策として、以下に記す。 1)栄養・代謝:消費熱量の実測についてや人工呼吸療養期における投与水分量についての検討を行う。 2)自律神経:HRV測定の縦断調査を継続して、自律神経障害の生じうる時期について探索する。 3)慢性期人工呼吸:人工呼吸実施者における肺合併症や死因についての検討をさらに深める。 4)認知・精神:当事者へのインタビューを通じ、感情が抑えきれないこと(情動制止困難)が生じる増悪および改善因子の探索を進める。加えて、病理班により、病理学検索が可能な症状については、非運動症状と非運動神経病変との関連を検討していく。
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