研究課題/領域番号 |
22H03416
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
大西 眞由美 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (60315687)
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研究分担者 |
川崎 涼子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (30437826)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 社会的包摂 / 地域生活定着支援 / 矯正施設 |
研究実績の概要 |
高齢・障がいのために出所後の自立生活が困難な者に対する特別調整による支援を受けた出所者の刑事施設への再入所率は7.1%であったのに対し、特別調整辞退者では46.4%であった(平成30年度版犯罪白書)。特別調整が行われるためには「本人の希望」があることが条件となるが、適切な支援があることで、再犯防止や継続的地域生活定着を可能とすることが示唆されていることから、「本人の希望」の有無に関わらず、伴走型の重層的支援が望まれる。 刑事施設出所直後からの支援に携わる保護観察官、保護司、更生保護施設職員を対象に、受刑経験者の継続的な健康生活支援に係るそれぞれの連携・協働について質問票調査を実施した。 健康課題や障がいを持つ矯正施設入所経験者の対応について、対応経験がある健康課題や障がいの種類、連絡・連携・協働経験がある組織や職種の種類が最も多いのは地域生活定着支援センター職員であり、保護司は最も少ない。これは、職種に求められる役割として当然であり、保護司が担当する矯正施設入所経験者の犯罪傾向や背景要因は、保護観察官が対応する事例に比べて、複雑困難という訳ではないことも考慮する必要がある。 連絡・連携・協働の方法として、「ケースカンファレンス」や「会議」の機会が最も多かったのは、地域生活定着支援センター職員、次いで保護観察官であったが、職種に求められる役割として当然であると言える。一方、定例会議等によって情報共有の機会やケースカンファレンスが実施される体制が構築されれば、自ずと連絡・連携・協働も活性化されることが期待される。すなわち、矯正施設入所経験者への支援において、保健分野との連絡・連携・協働が行われる場・機会の実体を構築することで、連絡・連携・協働が活性化され、当事者にとっても支援者にとってもメリットが増える可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の事前調査として2021年度に実施した地域生活定着支援センター職員、保護観察官、市町村保健師に対する質問票調査結果について分析し、報告書として取りまとめた。報告書は、保護観察所、更生保護施設、保護司会、刑務所、保健所、市町村保健センター等関係機関に配布した。 分析結果を基に、薬物事犯者支援における司法分野と地域保健分野(保健師)の連携・協働に係る課題の共有を図り、実装モデル案を開発することについては、研究者レベルではできたが、実装に向けて関係者との具体的な検討・調整が必要である。また、司法分野と地域保健分野(保健師)による連携・協働のインターフェース・モデルとなる「司法と保健の支援窓口」を開設するための準備フェーズと位置づけ、関係者との合意形成についてはできたが、実装については、具体的な運用に係る検討と準備が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
薬物事犯者支援における司法分野と地域保健分野(保健師)の連携・協働のインターフェース・モデルとなる「司法と保健の支援窓口」の試行を行う。 1.長崎刑務所(刑務官)、長崎県保護観察所(保護観察官)、保護司、更生保護施設職員、長崎県および大分県地域生活定着支援センター職員、長崎県福祉保健部精神保健担当保健師、自治体保健師、長崎DARC(Drug Addiction Rehabilitation Center)スタッフらとのステイクホルダー会議の開催。必要に応じて養護教諭等教育・学校関係者もメンバーとする。また、長崎県再犯防止推進ネットワーク協議会とも協力の上、進める。(主担当:大西) 2.上記1の会議を定例研究モニタリング会議とする。(主担当:大西) 3.「司法と保健の支援窓口」の試行にあたり、上記1のステイクホルダーらの研修会・勉強会を企画・実施する。特に保護司会等、地域の中で矯正施設入所経験者や触法行為者らへの支援を行っている者達との情報共有や学びの機会を確保する。(主担当:川崎) 4.司法分野と地域保健分野の連携・協働モデルを概念化し、ワークショップにより、実装モデル案を開発する。(主担当:大西)
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