研究課題/領域番号 |
22H03455
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)
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研究分担者 |
本田 祐一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (40736344)
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091)
佐々木 遼 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (90908568)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 変形性膝関節症 / 関節痛 / 運動療法 / 運動誘発性疼痛軽減 / マクロファージ / IL-4 / PPARγ / STAT6 |
研究実績の概要 |
本研究ではIL-4/STAT6/PPARγシグナリングならびに炎症型・抗炎症型マクロファージ関連マーカーの検索を通じて、運動療法による変形性膝関節症(膝OA)の疼痛軽減効果の生物学的機序の一端と考えられる滑膜におけるマクロファージの分化誘導のメカニズムを明らかにするとともに、このような効果の発現に必要な運動の要素を明らかにすることを目的としている。本年度は、疼痛軽減効果を得るために必要な運動の要素の検討を進めた。具体的には、関節軟骨の変性・摩耗を惹起するモノヨード酢酸(MIA)をラットの右膝関節腔内に投与することでラット膝OAモデルを作成し、MIA投与2週後から3週間にわたり運動を負荷した。採用した運動は(1)大腿四頭筋の筋収縮運動と膝関節の運動を同時に負荷する等張性筋収縮運動、(2)大腿四頭筋の筋収縮運動のみを負荷する等尺性筋収縮運動、(3)膝関節の他動運動のみを負荷する持続的他動運動、の3種類を設定した。そして、実験期間中は痛みの行動学的評価として覚醒下でRandall-selite装置を用いて膝関節の圧痛閾値を測定するとともに、げっ歯類における自発痛の指標とされている患肢荷重率、動作時痛の指標となる1歩行周期時間に対する立脚期時間および遊脚期時間の百分率(立脚期率および遊脚期率)を評価した。結果、等張性筋収縮運動ならびに等尺性筋収縮運動を負荷すると、患部の痛覚感受性亢進と自発痛が改善することが認められた。一方、他動関節運動を負荷してもそれらの改善は認められなかった。以上の結果より、変形性膝関節症に対する疼痛軽減効果を得るために必要な運動の要素は筋収縮ではないかと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度実施した実験において、痛みの行動学的評価として小動物用トレッドミルを用いた歩行解析を実施したが、測定条件の確立に当初想定したよりも時間を要した。そのため、十分なデータを得ることができておらず、研究全体の進捗状況としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究成果に基づくと、ラット膝OAモデルに筋収縮運動を負荷すると疼痛軽減効果が認められたが、関節運動のみを負荷しても疼痛軽減効果は認められなかった。つまり、運動療法によって疼痛軽減効果を得るためには筋収縮運動を負荷することが必須であり、筋収縮運動によって骨格筋内で産生される何らかの抗炎症物質が膝関節の滑膜炎の軽減に作用しているのではないかと予想される。そこで、令和5年度は筋収縮運動によって産生される抗炎症性物質をターゲットとし、大腿四頭筋を検索材料として疼痛軽減効果に関わる物質を同定することを目的に研究を進める予定である。
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