研究課題/領域番号 |
22H03464
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
稲田 全規 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80401454)
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研究分担者 |
平田 美智子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40544060)
鈴木 克彦 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80344597)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | プロスタグランジンD2 / プロスタグランジンD2代謝体 / 筋萎縮 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、プロスタグランジン (PG) D2の機能を解析し、廃用性筋萎縮の予防・治療法の開発につなげることである。本課題ではPGD2とその代謝体を用い、細胞から個体までの機能評価とそのmRNAを用いた階層別なRNA-seqによる網羅解析を相互に行い、廃用性筋萎縮の原因因子の同定を試みる。最終的には、モデル動物解析により、筋萎縮の原因因子の発現変動への影響を解析し、不動や不活動による廃用性筋萎縮の治療法開発につなげることである。今年度は以下の3項目について実験を実施した。①筋器官培養を用いたPGD2による筋細胞増殖作用の解析では、マウスより速筋優位の前脛骨筋および遅筋優位のヒラメ筋を採取し、ex vivo 筋器官培養を行うことで、PGD2とその代謝体の細胞増殖作用を検討した。② 筋器官培養を用いたPGD2による筋細胞分化作用の解析では、①と同様に、ex vivo 筋器官培養を行い、PGD2とその代謝体の筋細胞分化作用を検討した。③ RNA-seqデータの組織解析では、マウス廃用性筋萎縮モデルを用いた試験を行った。筋萎縮は下腿筋のマイクロCTによる3次元解析と湿重量測定、筋線維CSA測定により評価した。また、これまでに得られたRNA-seq解析データをもとに組織解析を実施した。今年度の各実験項目の実施により、PGD2とその代謝体は筋細胞の増殖や分化に関わる筋形成系遺伝子や筋分解系遺伝子の発現に影響を与え、筋萎縮に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の計画であった、筋器官培養を用いたPGD2による筋細胞増殖作用の解析、筋器官培養を用いたPGD2による筋細胞分化作用の解析、マウス廃用性筋萎縮モデルを用いたRNA-seqデータの組織解析は、当初の計画を達成した。ex vivo 筋器官培養系を用いた実験では、MTTアッセイやATPアッセイにより細胞増殖・生存活性を評価した。リアルタイムPCR、ウェスタンブロット解析では筋形成系因子や筋分解系因子、筋細胞増殖阻害因子の解析を行った。マウス廃用性筋萎縮モデルを用いたRNA-seqデータの組織解析では、筋組織を単離し、組織切片を作製し組織染色により筋線維断面積を測定した。また、免疫組織染色により筋線維型の変化を解析した。さらに、得られたRNA-seq解析データをもとに、免疫染色、ウェスタンブロットなどを用いて組織解析を行った。これらの結果より、PGD2とその代謝体は筋細胞の増殖や分化に関わる筋形成系遺伝子や筋分解系遺伝子の発現に影響を与えることが示唆された。次年度の計画であるマウス廃用性筋萎縮モデルへのPGD2 合成酵素阻害薬の効果検証において、PGD2とその代謝体の標的となる筋形成系遺伝子や筋分解系遺伝子候補の選定を完了した。これらの成果は次年度の令和6年度の本課題を円滑に進める必須な結果であり、今年度の研究進展は前倒しの課題実施を可能とする。これら理由により、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の研究実施計画は、マウス廃用性筋萎縮モデルへのPGD2 合成酵素阻害薬の効果検証について検討する。前年度までに得られた廃用性筋萎縮におけるPGD2とその代謝体の機能解析結果をもとに、最上流であるPGD2とその代謝体すべての合成を阻害するPGD2合成阻害薬を尾部懸垂マウスに投与し筋萎縮の抑制効果を判定する。PGD2合成酵素阻害薬で筋萎縮の改善効果が認められ、かつ、RNA-seqで解析した、PGD2誘導性の廃用性筋萎縮の原因因子の発現が阻害薬投与で抑制されるか、否かを検討する。これら実験データを損傷による不動や不活動に伴う廃用性筋萎縮やサルコペニアの治療につながる分子標的として活用し、治療法開発や予防因子の開発につなげたい。以上、本研究計画あるいは研究を遂行する上での障壁はなく、順調な課題実施が可能である。
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