研究課題
本年度は,マウスの足底筋に外科的な過負荷を誘導し,その筋より単離したサテライト細胞のシングルRNA解析を実施した。これまで汎用され多くの結果が発表されている再生筋とは異なり,我々の過負荷筋では術後4日目のサンプルであるが,期待通り,静止期,活動期,増殖期,分化状態の細胞が全て存在していた。また,興味深いことに,明確な二種類の増殖期の分画が存在しており,1つはS/G2/M期の集団であり,もう1つはG2/M期の集団であった。このS期を含まない細胞の生理的意義解明は,サテライト細胞の自己複製解明につながる事を期待し,この結果を足がかりにサテライト細胞の自己複製機構解明を目指す。また,今年度は,マクロファージが分泌する分泌タンパク因子が肥大筋のサテライト細胞に直接作用している事を,放射線照射を必要としない骨髄移植モデルを樹立し証明した。さらに,in vitroにおけるマクロファージの分化系も立ち上げ,マクロファージが分泌する同定因子が直接サテライト細胞の分化状態を抑制していることも証明した。さらに,同定したマクロファージ由来因子がサテライト細胞に作用し,Redox状態を一時的に変化させることや抗酸化作用と筋分化抑制作用を持つNrf2とHmox1の発現にも寄与し,筋分化因子の発現を調節していることを証明した。今年度購入させて頂いたreal-time PCR機をフル活用するこで,これら筋分化抑制遺伝子の発現を再現よく定量解析することができ,これら成果は論文として発表することができた。また,HeyL欠損マウスを用いた,自発運動モデルの解析もほぼ終了している。
1: 当初の計画以上に進展している
論文も受理され,期待した通りのscRNA-seqの結果が得られているため。
本申請課題の礎となっているのが,肥大時と再生時では筋サテライト細胞の増殖様式がことなり,特に再生時では完全にその発現が消失する転写因子HeyLが,肥大筋の増殖期筋サテライト細胞では高発現している点である。このHeyLの必要性が自発運動でみられる筋サテライト細胞の増殖にも必要であることを検討しており,HeyL欠損マウスを用いた自発運動モデルの成果も論文発表することを目指す。また,scRNA-seqの解析を進め,二つ存在する増殖分画とサテライト細胞の自己複製の関係を明らかにする。特にtrajectory解析などにより筋サテライト細胞が静止期からどのような動態を辿るのかについて解析を進める。また,解析が進んでいない間葉系前駆細胞やマクロファージが分泌する因子の解析を進め,筋肥大時における筋サテライト細胞の新規増殖メカニズムの全貌解明を目指した研究につなげる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件)
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