研究課題
健康長寿を目指して運動が推奨されている。継続的な運動には、運動器である骨格筋の機能の維持向上が重要であるのは疑いの余地はない。加齢に伴う骨格筋量と機能の低下すなわち骨格筋老化に対する適切な予防はもちろん改善策が未確立であり、早急に解決が望まれている。本研究では、加齢に伴い骨格筋の機械的刺激受容機構が機能不全(感度不良)となり、日常生活活動レベルでは筋タンパク合成が十分に活性化しないことが骨格筋老化の原因であると仮説を立て、ピエゾチャネルをはじめとする機械的刺激感受性イオンチャネルに着目し、運動の効果発現における骨格筋の機械的刺激受容機構を解明し、機械的刺激受容機構の活性化による運動効果獲得策とその増強法を開発するとともに、骨格筋老化の克服策の確立に向けた知的基盤を形成することを目的とする。研究は4年計画で実施され、本年度はその初年度にあたる。実験には、マウス筋芽細胞由来C2C12細胞および実験動物(C57BL/6J雄性マウス)を用いた。まず、C2C12細胞を用いた培養細胞実験により、TRPV4は骨格筋細胞の機械的刺激受容機構として機能し、その活性化は筋細胞量の増加をもたらすと考えられた。また動物実験では、骨格筋の可塑性発現に伴うピエゾチャネルの発現量の変化を追究した。ピエゾチャネル発現量は速筋である足底筋に比べて遅筋であるヒラメ筋で高値を示した。加齢に伴いピエゾチャネル発現量は減少する傾向を示した。この減少傾向は、遅筋に比べて速筋でより顕著に認められた。廃用性に萎縮した骨格筋では、ピエゾチャネル発現量は低下した。共同筋腱切除に伴う機能性過負荷によって筋肥大時には、速筋ならびに遅筋のピエゾチャネル発現量は増加傾向を示した。以上より、骨格筋の量的変化にピエゾチャネルが関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
マウス筋芽細胞由来C2C12細胞および実験動物(C57BL/6J雄性マウス)を用いた検討により、TRPV4は骨格筋細胞の機械的刺激受容機構として機能し、その活性化は筋細胞量の増加をもたらすこと、そして動物実験では骨格筋の量的変化にピエゾチャネルが関与していることが示唆されるなど当初計画は概ね達成できている。
昨年度に引き続き、当初の計画通りに研究を推進する。骨格筋細胞における機械的受容機構について、ピエゾチャネルおよびTRPV4を対象に解析する。筋衛星細胞および単一筋細胞に対して伸展刺激を加え、蛍光指示薬による細胞内Ca2+濃度変化をリアルタイムに測定・評価する。今年度はさらに、活性化剤や阻害剤、RNA干渉法によるターゲット遺伝子ノックダウンなどの手法を駆使して、ピエゾチャネルおよびTRPV4の機能解析を進める。また、実験動物(マウス)を用いて、骨格筋の再成長(肥大)、再生および萎縮に伴うPiezo1、Piezo2、Tentonin3、TRPV4の発現量をmRNAおよびタンパクレベルで明らかにする。また、加齢マウス骨格筋におけるピエゾチャネルおよびTRPV4の機能的変化を追究するための準備を開始する予定である。
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Methods in Molecular Biology
巻: 2460 ページ: 217~225
10.1007/978-1-0716-3036-5_16
Neuroscience & Biobehavioral Reviews
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https://sozo-ac.com/professor/goto_katsumasa/index.html