研究課題/領域番号 |
22H03501
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
横井 惇 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 研究員 (70795393)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 運動学習 / 到達運動 / 瞳孔径 / 皮膚電気抵抗 |
研究実績の概要 |
2022年度は以下の課題を実施した。下記1項および2項については適宜学会等で報告を行った。 【1. 運動課題中における自律神経指標の同時測定を行う実験系の作成および運用】これまで測定していた瞳孔径に加えて、新たに皮膚電気抵抗と心電図の同時測定を行う実験系を構築した。この実験系を用いて、到達運動中の異なる大きさの運動誤差に対する、これら自律神経指標の応答パターンを計測したところ、phasic成分とtonic成分のそれぞれにおいて瞳孔径と皮膚電気抵抗の間に高い相関が確認された。瞳孔径は交感神経系と副交感神経系の双方の支配を受ける一方で、汗腺は主に交感神経系の支配を受けることから、運動課題中の瞳孔径応答は交感神経活動(NA活動)の変化を反映しているものと考えられる。 【2. 運動適応における文脈効果と機械学習モデルを用いた再現および自律神経応答の解釈】到達運動を用いた運動適応の実験系を用いて、短期の運動記憶の忘却動態および瞳孔径の計測を行った。忘却における文脈効果を示唆する興味深い結果が得られ、この結果は文脈効果に関する機械学習モデル(Heald et al., Nature, 2021 )によってよく再現された。また、この時の瞳孔径変動データと類似の変動を示すモデル内部変数の探索を行い、自律神経応答の計算論的解釈を行った。その結果、自律神経応答と脳における文脈情報処理との間の関連を示唆する結果を得た。 【3. 運動スキルの定着に関する予備実験】瞳孔径の同時計測を行いつつ系列運動課題を行うための実験系を構築し、24時間後の記憶定着に関して実験パラメータ探索のための予備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたとおり、2022年度は【1. 運動課題中における自律神経指標の同時測定を行う実験系の作成および運用】【2. 運動適応における文脈効果と機械学習モデルを用いた再現および自律神経応答の解釈】【3. 運動スキルの定着に関する予備実験】などの課題を実施できた。その結果、瞳孔径変動と交感神経活動(NA活動)との関連を確認する結果が得られたほか、NA活動と文脈情報処理との関連を示唆する結果を得ることができた。また、運動適応と運動スキル学習の双方の観点から運動学習記憶における文脈効果および行動タギング現象の検証を行うための体制が整った。 以上から、本研究課題は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、主に前年度の結果の論文化を進めつつ以下の課題を行う。 【1. 運動適応・運動スキル学習の実験系を用いた運動学習記憶定着の定量のための実験プロトコルの決定】行動タギング現象の検証のためには、学習記憶の定着を精度良く定量する実験プロトコルの決定が重要となる。前年度に引き続き予備実験を行い必要な試行数・条件数などの実験パラメータの探索を行う。 【2. 行動タギング現象の検証】上の課題の進捗状況に応じて、行動タギング現象の検証を開始する。自律神経指標(瞳孔径および皮膚電気抵抗)を用いて被験者の主観的新奇性の指標とする。 【3. 文脈依存学習の数理モデルを用いた自律神経応答の計算論的解釈】主に「運動適応」の実験系を用いて、文脈依存学習の機械学習モデル (Heald et al., Nature, 2021など)によるモデル内部表現と運動課題中の自律神経指標との比較を行い、文脈依存学習におけるNA(自律神経系)の役割について検討する。また、モデルより予測される行動および自律神経応答について、新たに実験を行い検証する。
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