研究課題/領域番号 |
22H03511
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡村 裕彦 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (20380024)
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研究分担者 |
十川 千春 広島工業大学, 生命学部, 教授 (10253022)
江口 傑徳 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (20457229)
大森 一弘 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (20549860)
福原 瑶子 (内田瑶子) 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (60779742)
池亀 美華 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (70282986)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 歯周病 / マクロファージ / 細胞外小胞 / 胎盤 |
研究実績の概要 |
胎盤は母体と胎児を結び,血液を介して栄養・代謝物,ガスの交換を行う精密な組織である。胎盤は小分子の通過を制御して母体の健康状態と胎児の成長発育において重要な役割を担っている。歯周病は口腔のみならず全身の健康状態に影響を及ぼす炎症性疾患である。妊娠中の母体が歯周病に罹患すると,母体の高血圧や腎臓・肝臓の機能障害などの疾患のみならず 胎児の成長発育を阻害するが,その詳細な分子機構は分かっていない。本研究では,歯周病原菌が感染したマクロファージ由来の『細胞外分泌小胞』の組織障害性とその動態に着目して,歯周病(原菌)が胎盤と胎児の成長を阻害する分子メカニズムを解明することを目指している。培養ヒト単球性細胞(THP-1)をマクロファージ(Mφ)に分化させた。歯周病原菌である Porphyromonas gingivalis(Pg)を感染させた Mφ (Pg-inf Mφ)から培養上清中に分泌された『細胞外分泌小胞』(Extracellular Vesicles: EVs)を回収した。回収したPg-inf Mφ EVsを妊娠マウスに投与した。胎盤と胎児を摘出し,組織切片と透明骨格標本を作製した。胎盤ではPg-inf Mφ EVs投与群において血管走行の乱れが認められ,母体側の血管面積が有意に減少していた。胎児の骨格透明標本(骨・軟骨を染色後に透明化)を解析したところ,Pg-inf Mφ EVs投与群では有意に骨格形成が遅延していた。以上の結果,歯周病原菌が感染したマクロファージ由来の『細胞外分泌小胞』は胎盤および胎児に移行し,胎盤の血管形成を阻害することで,胎児の骨格形成を阻害すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定は,『細胞外分泌小胞』の胎盤・胎児に対する組織障害性を調べることであった。歯周病原菌である Porphyromonas gingivalisを感染させたマクロファージから培養上清中に分泌された『細胞外分泌小胞』を回収し,妊娠マウスに投与し,胎盤の血管構造の異常や胎児の骨格形成の遅延について見出した。以上のことから,研究は概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,胎盤組織の蛋白質の抽出と質量分析による解析を進める予定である。 具体的には,胎盤組織をホモジナイズし,蛋白質を抽出する。一方,数ミリ角にした胎盤組織を培養液中で数時間培養し,その上清中に放出される『組織由来の細胞外分泌小胞』を回収する。これらのサンプルに含有される蛋白質の種類と量を世界最高水準の質量分析器を用いて網羅的に解析する(協力:がん研究会・植田幸嗣博士)。得られたデータについてプロテオミクス解析することで,Pg-inf Mφ EVsが胎盤組織・細胞の遺伝子・蛋白質の発現にどのような影響を与えるか調べる。胎盤組織の形成には秩序だった血管形成や配列が重要とされており,血管形成関連因子(VEGF, Angiogeninなど)に着目している。 本研究成果を基に,母子の健康状態の維持と正常な成長発育における理想的な口腔環境の構築を目指し,健康医学に貢献する。
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