研究課題
肥満はアルツハイマー病(AD)のリスクファクターであるが、その分子メカニズムについては未だ議論されていない。本年度は、高脂肪食(HFD)がADマウス脳のミクログリア機能活性に及ぼす影響を検討した。In vivoでは、アルツハイマー病のモデルマウスである変異型APPノックインマウスにHFDを摂取させ、アミロイドAβ沈着とミクログリア機能に対するHFDの影響を探った。In vitroでは、MG6ミクログリアにHFDに濃縮された脂肪酸(FAs)を投与し、MG6の貪食活性とAβ受容体の発現に対するFAsの影響を探った。その結果 生体内では、ND飼育のADマウス脳では、dense core Aβプラーク周辺に活性化したミクログリアが多く検出されたが、HFD飼育のマウス脳では、プラーク周辺のミクログリアの集積が通常食に比べて少なかった。さらに、HFDを給餌したADモデルマウスでは神経突起の萎縮と記憶障害を増強した。ミクログリアの培養細胞株を用いた検討では、オレイン酸がミクログリアにおける脂質滴の貯蔵を誘導し、Aβの取り込みとAβ取り込みに関連する種々の受容体の発現を低下させることがわかった。以上の結果は、日本免疫学会および日本解剖学会で発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
ミクログリアによる異常アミロイドタンパク質の貪食が、高脂肪食の摂取や、特定の脂肪酸環境によって変化するという重要な所見を得ることができた。脂質環境変化に伴うミクログリアの貪食能の変化をもたらすメカニズム解析についても、ミクログリア細胞株(MG6)を使っておおむね順調に進んでいる。一方で高脂肪食摂取の脳内の異常アミロイドタンパク質蓄積の変化が、モデルマウスの認知行動や、神経細胞の変性に、いかなる影響を及ぼすかについては未だ安定した結果が得られていない。
高脂肪食摂取がアルツハイマー病モデルマウスの行動変化や、長期間の神経変性に及ぼす影響について引き続き検証を行う。またオレイン酸に代表されるオメガ9系脂肪酸がミクログリアの異常タンパク質除去に果たす役割について更に検討を行う。
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