研究課題
腫瘍周囲や脳に存在する免疫系細胞は、がんや神経変性疾患の病態に関与している。本年度は主に、免疫系細胞の脂質代謝が腫瘍の増殖や神経疾患にいかなる影響を及ぼすかについて検討を行った。その結果、大腸がんの腫瘍内および周囲に集積する免疫系細胞であるマクロファージには脂質代謝に重要な役割を担う分子が発現しており、当該分子の遺伝子ノックアウトマウスを用いてマクロファージの脂質代謝を変化させると、興味深いことに大腸がんの増殖や浸潤が変化することを実験的に証明した。またすい臓やメラノーマ自体も、様々な脂質に対して、その増殖や浸潤を変化させることを、動物実験レベルで突き止めた。この結果は、腫瘍細胞内および周囲の免疫系細胞の脂質代謝の変化、さらには脂質栄養ががんの予後に深く関連している可能性を示している。また発達期脂質栄養の変化が、脳内マクロファージであるミクログリアの活性化状態を変化させ、アルツハイマー病の病因の1つとされるアミロイドタンパク質の凝集に深く関与することをアルツハイマー病モデルマウスの実験から明らかにした。この結果は脂質栄養の変化によって認知症の発症や進展に関与することを示す重要な知見である。
2: おおむね順調に進展している
がんや神経変性疾患において、マクロファージをはじめとする免疫系細胞が病態に重要な役割を担っていることは実験的に証明することができた。
発達期脂質栄養の変化によって、各種免疫系細胞がいなかる機能修飾を受けるかについては、今後実験的に解析していく予定である。脳のマクロファージであるミクログリアについては既に研究着手しており、今後は他の免疫系細胞にも解析対象を広げる予定である。
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