研究課題/領域番号 |
22H03527
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
磯辺 智範 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70383643)
|
研究分担者 |
石井 亜紀子 筑波大学, 医学医療系, 客員研究員 (10400681)
岡田 浩介 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80757526)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 客員教授 (90241827)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 脂肪性肝炎 / 酸化ストレス / 転写因子Nrf2 / 筋-肝連関 |
研究実績の概要 |
肥満に随伴する骨格筋の酸化ストレス障害は,臓器連関 (筋-肝連関) を介して非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) 病態を増悪させる.本研究では,生体の酸化ストレス防御の司令塔である転写因子Nrf2による骨格筋機能の維持がNASH病態に及ぼす影響およびそのメカニズムを解明することを目的とする.本目的の達成のため,全身Nrf2欠損マウスをベースに,筋細胞にのみNrf2を発現する筋特異的Nrf2遺伝子レスキューマウスを新たに作製し,NASHにおける骨格筋Nrf2の機能を検証した.これまでの解析では,筋細胞Nrf2がNASHの抑制因子として機能することを明らかにした.本年度はそのメカニズムを明らかにすべく,以下の解析を行った. 1. Nrf2による筋由来液性因子 (myokine) 発現量の変化:肝に影響を与えることが報告されている複数のmyokineの発現量を全身Nrf2欠損マウスおよび筋特異的Nrf2遺伝子レスキューマウスで比較した.予想に反して,Nrf2発現の有無によってmyokineの発現量には変化は認められなかった. 2. 野生型および全身Nrf2欠損マウスの血中細胞外小胞 (EVs) の解析:臓器間の情報伝達を担う血中EVsの内包タンパク質を解析したところ,野生型マウスでは,Nrf2下流の抗酸化分子が内包されていることが確認された. 3. NASH-肝癌における筋Nrf2の役割の解析:NASH-肝癌モデルp62:Nrf2二重欠損 (DKO) マウスおよびDKOマウスをベースに作製した筋特異的Nrf2遺伝子レスキューマウスに対して高脂肪食を摂餌させ,NASH-肝癌を誘導した.本年度に食餌介入はほぼ完了したため,次年度は,肝病態を比較解析する計画である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初から計画していたmyokineの解析を順調に実施することができた.当初の予想に反して,Nrf2はmyokineの発現量に変化を及ぼさないことが判明した.しかし,順調に解析を進められたため,新たな仮説である「細胞外小胞を介した臓器連関」の可能性を見出すことができた. また,NASH-肝癌に対する骨格筋Nrf2の役割を解析するため,新たな遺伝子改変マウスを作製し,食餌介入実験をおおよそ完了できた.次年度はこれまで得られた知見活かして,さらなる解析を推進する計画である.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見を基盤に,骨格筋Nrf2がNASHを防御するメカニズムの解明を目指す.特に,筋細胞Nrf2が細胞外小胞を介してNASHを抑制する可能性が見出されたため,「細胞外小胞を介した臓器連関」に着目して検証を行う.また,NASH-肝癌モデルであるp62:Nrf2二重欠損 (DKO) マウスおよびDKOマウスをベースに作製した筋特異的Nrf2遺伝子レスキューマウスの肝病態の評価を行う.骨格筋Nrf2がNASHの進展のみならず,肝発癌を抑制する可能性について検証する.
|