研究課題/領域番号 |
22H03535
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
阪上 浩 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (60372645)
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研究分担者 |
黒田 雅士 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (00803579)
堤 理恵 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (80510172)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | サルコペニア / タイチン / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、敗血症患者の発症初期段階において、蛋白質分解酵素であるカルパインの活性化とそれに伴うタイチン分解および尿中への放出が生じていること、さらには尿中タイチン濃度上昇が骨格筋萎縮の早期バイオマーカーになることを見出した。生活習慣病によるサルコペニア予防に対する革新的な技術開発を目的に、異化亢進に応答した代謝制御メカニズムを明らかにするため、本年度は(1)から(4)の研究の課題に課題に取り組み、研究成果は以下の通りである。(1)骨格筋萎縮における代謝変動とカルパイン活性・骨格筋タイチン分解機構の解明:敗血症モデルマウスや筋萎縮モデルマウスや糖尿病モデルマウスにおいても筋萎縮誘導後の経時的な代謝産物の変動の解析を血液、骨格筋、肝臓、脂肪組織の代謝関連組織において実施し、時間的経過を加味した侵襲時代謝マップを作成した。さらにカルパインノックアウトマウスにおいて、カルパイン活性の抑制と骨格筋分解により放出されるタイチンとの関連を明らかとした。(2)筋蛋白質異化と代謝産物の意義およびこれに制御する機序の解明:侵襲時にPDK4が活性化され、これによってPDHが抑制され、Acetyl-CoA以下のATP産生機構が抑制されること、代謝変動として解糖系の亢進とTCA回路の抑制、乳酸値の上昇と低酸素シグナルの関連を明らかとした。(3)各種病態における代謝変動関連機構が生命維持機構に与える臨床的意義の検証:重症患者や糖尿病患者、高齢者などの血液・尿を用いたメタボローム解析、尿中のタイチンの解析のためのデータ収集を完了した。(4)各種病態における代謝産物誘導による介入効果の検証:マウスへのロイシン投与が敗血症誘導時の代謝変動や骨格筋萎縮に有効であること、侵襲時にスレオニン投与が骨格筋萎縮や腸管免疫を改善することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
侵襲時代謝マップを作成、カルパインノックアウトマウスを用いたカルパイン活性の抑制と骨格筋分解により放出されるタイチンとの関連、重症患者や糖尿病患者、高齢者などの血液・尿を用いたメタボローム解析、尿中のタイチン解析のためのデータ収集、敗血症誘導マウスへのロイシン投与の有効性の確認、さらにスレオニン投与が骨格筋萎縮や腸管免疫を改善することの発見により、本年度予定された研究計画がほぼ実施され、かつ新たな知見が獲得されたことにより当初の計画通りに進行していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り研究計画を推進する。すなわち、骨格筋萎縮における代謝変動とカルパイン活性・骨格筋タイチン分解機構の解明に関しては、敗血症患者の尿試料を用いて骨格筋分解により放出されるタイチンを測定し、CT撮像により評価する筋蛋白異化との関連を明らかにする。また、代謝変動との関連について多変量・層別解析を行う。さらに、各種モデルマウスにおいてカルパイン活性、骨格筋タイチン、尿中タイチンと各臓器の代謝産物との関連について解析する。筋蛋白質異化と代謝産物の意義およびこれに制御する機序の解明に関しては、HIF1αとmTOR経路の関連の明確化を行う。特にmTOR誘導性オートファジーと代謝産物としてのアミノ酸との関連を解析する。これにより、アミノ酸センサーであるmTORが代謝調節において中心的な役割を担っていることを検証し、基礎的および臨床的にオートファジーによる生命維持機構を解明する。各種病態における代謝変動関連機構が生命維持機構に与える臨床的意義の検証に関しては、重症患者や糖尿病患者、高齢者などの血液・尿の採取、血液を用いた解析データ数を増やし、AIを活用して新しい代謝の模型図を作成し、生命維持に関わる機構を明確にする。各種病態における代謝産物誘導による介入効果の検証に関しては、ロイシンまたはスレオニン製剤のプロトタイプを作成し、安全性を検討した後に臨床的に効果を検討する。 新たに加わった研究分担者・野村とは、研究代表者・阪上と既に多くの研究を共同で実施しており、さらに臨床研究についても豊富な経験をもつことから侵襲時の代謝マップの作成について問題はない。また、新たな研究分担者・和泉は研究代表者のもとで遺伝子組換え動物を用いて学位を取得したものであることから、研究内容や役割に関しても昨年から打ち合わせを済ませており研究推進に特に問題はない。
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