研究課題/領域番号 |
22H03536
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
平野 勝也 香川大学, 医学部, 教授 (80291516)
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研究分担者 |
倉原 琳 香川大学, 医学部, 准教授 (00341438)
山下 哲生 香川大学, 医学部, 助教 (80444727)
橋本 剛 香川大学, 医学部, 助教 (80380153)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 老化 / 血管内皮細胞 / 細胞間接着 / カルシウム / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
1)細胞実験の実績:①継代を重ねた老化内皮細胞(ブタ大動脈由来)において、トロンビン刺激後早期にアクチン線維がストレスファイバーを形成することを見出した。これまでの研究から、細胞間接着の成熟度が低いとトロンビン刺激早期にストレスファイバーが、成熟度が高いと細胞辺縁部にアクチン線維束が形成されることを見出しており、老化内皮老化において細胞間接着が未熟化していることを見出した。②継代を重ねて老化内皮細胞において、貯蔵部作動性カルシウム流入活性が亢進することを見出した。③低継代の内皮細胞で細胞間接着が未熟な継代初期の細胞、コンフルエントに達して細胞間接着の成熟度の高い細胞、細胞間接着が未熟化した高継代の老化内皮細胞の3者で、DNAマイクロアレイによりトランスクリプトーム解析を行い、細胞間成熟度と相関する候補遺伝子を見出した。 2)動物実験の実績:①野生型マウスでは加齢に伴ってインスリン受容体の反応性が低下することをインスリン負荷試験により明らかにした。この加齢性インスリン抵抗性の発症がPAR1欠損マウスで抑制されることを明らかにした。加齢性インスリン抵抗性の発症とPAR1欠損よる抑制は、雌雄共に観察された。また、雌マウスは、雄マウスよりもインスリン感受性が高いことを見出した。②50週齢以上の野生型マウスとトロンビン受容体PAR1を欠損するマウスで、肝臓、脂肪組織、骨格筋の代謝関連臓器における遺伝子発現をDNAマイクロアレイにより比較解析し、3つの臓器に共通して発現が亢進する遺伝子を4種、発現が低下する遺伝子を3種見出した。発現が亢進する遺伝子の中で機能既知の遺伝子はインスリン分解酵素のみであり、発現が低下する遺伝子の中で機能既知の遺伝子はPAR1のみであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた細胞実験において老化内皮細胞における貯蔵部作動性カルシウム流入機構の亢進の発見は予想外の結果であった。動物実験においては、加齢に伴うインスリン抵抗性の発症がPAR1欠損マウスで抑制されるとする従来の知見の機序解明につながる、遺伝子の候補が、野生型とPAR1欠損マウスとの網羅的遺伝子発現解析から得られた。細胞特異的PAR1欠損マウスに関して、マクロファージおよび血管内皮細胞特異的PAR1欠損マウスの準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
1)細胞実験の計画:①初年度の研究で明らかとなった細胞間接着の成熟度と関連する候補遺伝子を一つ一つ解析し、老化内皮細胞における細胞間接着の未熟化に関わる遺伝子を明らかにする。具体的には、候補遺伝子の発現と細胞老化の相関を明らかにし、候補遺伝子の発現抑制の内皮細胞機能に及ぼす影響を解析する。②初年度で明らかにした老化内皮細胞における貯蔵部作動性カルシウム流入機構の亢進の機序を明らかにするとともに、内皮細胞の機能に及ぼす影響を明らかにする。具体的には、貯蔵部作動性カルシウム流入機構に関わることが既に知られている遺伝子の発現を若齢と老化内皮細胞で比較し、機能解析としては内皮バリアー機能、細胞増殖能、細胞遊走能の違いを若齢と老化内皮細胞で比較解析する。 2)動物実験の計画:初年度で明らかにした野生型とPAR1欠損マウスで異なる遺伝子であるインスリン分解酵素について、加齢に伴うインスリン抵抗性との関連を明らかにする。具体的には、加齢に伴うインスリン分解酵素の発現変動、PAR1によるインスリン分解酵素の発現調節とその仕組み、加齢性インスリン抵抗性の発症へのインスリン分解酵素の関与を晃にする。
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