本研究では、組織に老化細胞が蓄積し、周辺の細胞を変質させることで骨格筋幹細胞数が減少するに至るメカニズムを解明する。本年度は組織内での細胞間相互作用を解析する空間オミクスの系の構築を重点的に行った。まず、骨格筋組織において空間情報を維持して活性化シグナル伝達や細胞状態を網羅的に解析するため、細胞の染色と消光を繰り返す連続免疫染色法を開発した。薬剤で容易に開裂可能なリンカーを介して抗体に蛍光物質を付加し、抗体を用いた標的の染色後、薬剤で蛍光シグナルが消光されることを確認した。また消光後のサンプルを用いて他の標的タンパク質が染色されることを確認し、連続的にタンパク質の空間データを取得可能であることを示した。また併行して空間トランスクリプトーム手法RNA Seq-smFISHの立ち上げを行った。本手法は単一分子のRNAを輝点として検出し、細胞あたりの輝点数を遺伝子発現としてカウントする。RNAを検出するためのターゲット配列を決定し、標的RNAあたり24種類のプローブをデザインした。次にデザインしたプローブを用いてRNAを検出するために、サンプル調整法の条件検討を行った。サンプルをゲルに封入し、タンパク質除去を行うことでバックグラウンドの低減及び単一RNA分子の検出に成功した。今後は連続免疫染色後の組織サンプルを用いてSeq-smFISHで単一RNA分子の輝点検出条件を検討するとともに、老化組織を用いた空間オミクスの実データ取得を行う。
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