研究課題/領域番号 |
22H03539
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
亀井 康富 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70300829)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 骨格筋 / 健康寿命 / 転写調節因子 / 筋機能 / 代謝 / 標的遺伝子 |
研究実績の概要 |
筋萎縮は加齢や不活動、低栄養、疾患(がん等)といった様々な要因で起こり、生活の質の低下と健康寿命の短縮につながる。本研究では、「FOXO1はどのようにして筋萎縮・筋機能低下を引き起こすか?」に取り組む。本研究課題の遂行により、超高齢社会の健康寿命延伸の手がかりとなり、また骨格筋を主体とした生理・病態生理現象の解明により健康科学分野進展への波及効果が期待される。そのため、 FOXO1の標的遺伝子の同定と骨格筋萎縮に関する機能解析およびFOXO1の転写活性を抑制する食品成分の探索と分子機序の解析を取り組む。 本年度の解析では、骨格筋特異的なFOXO1, 3a, 4欠損マウスにルイス肺がん細胞を移植することで、がん悪液質に対するFOXOの影響を調べた。野生型マウスにおいて、がん悪液質によって筋重量や筋力の低下、FOXOや筋萎縮関連遺伝子の発現増加がみられたが、FOXO欠損マウスではこれらの影響が抑制された。すなわち、がん悪液質による筋機能(筋力)の低下などは、FOXOを介して誘導されることが示された。また筋萎縮を抑制することが報告されている転写調節因子PGC1αを骨格筋特異的に過剰発現・欠損したマウスを用いた解析により、PGC1αが神経筋接合部の形成に重要なDok-7遺伝子発現を制御していることを見出した。さらにFOXO1によって発現制御されることが判明したDnmt3a (DNAメチル化酵素)の機能的役割を調べるために骨格筋特異的Dnmt3a過剰発現マウスを作製し、表現型の解析を実施している。さらに、FOXO1の転写活性を評価できるGAL4-FOXO1レポーターアッセイ系により、FOXO1活性を抑制する食品由来化合物が8種類見つかり、筋培養細胞を用いた作用機序の解析を実施した。これらの化合物は筋萎縮抑制機能を持つ食品や医薬品に応用されることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FOXO1の標的遺伝子の同定と骨格筋萎縮に関する機能解析およびFOXO1の転写活性を抑制する食品成分の探索と分子機序の解析に関して、遺伝子発現解析およびin vitro、in vivoの解析により新しい知見が得られつつある。またFOXO1と相互作用すると考えられるPGC1やDnmt3aに関して遺伝子改変マウスの表現型解析により筋萎縮のメカニズムに新たな手がかりが得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続きFOXO1の標的遺伝子の同定と骨格筋萎縮に関する機能解析について研究を進める。 FOXO1の新規標的遺伝子の同定:野生型コントロールの骨格筋と比較して、FOXO1過剰発現マウスで発現増加(減少)し、FOXO欠損マウス(筋萎縮刺激:不活動やがん悪液質モデル)で発現減少(増加)する遺伝子(FOXO1の標的遺伝子)を探索する。FOXO1がどのような遺伝子を活性化あるいは抑制し、筋萎縮を引き起こすかの重要な手掛かりが得られることが期待される。 FOXO1の標的(候補)遺伝子に関する機能解析:絶食時のFOXO欠損マウスサンプルを用いて、新規標的遺伝子候補としてOdc1 (Ornithine decarboxylase)などが得られた。培養細胞(C2C12筋芽細胞や筋初代培養)を用いて、FOXO1の活性化や抑制をした時に、Odc1の下流であるポリアミン経路に着目して解析する。FOXO1がポリアミン代謝(プトレシンやスペルミジン)を介して筋萎縮に寄与するか否かを明らかにする。 FOXO1はPGC1βやDnmt3aの発現を抑制する。FOXO1およびPGC1により神経筋接合部の遺伝子発現(Dok-7など)や機能に対する影響を検討する。またDNAメチル化と筋萎縮との因果関係の解析に取り組む。この実験により、筋萎縮に伴って生じる(健康に不利益な可能性のある)現象を明らかにし、筋萎縮の病態生理学の手掛かりが得られる。さらに食品成分によりFOXO1活性に与える影響を解析する。
|