研究課題/領域番号 |
22H03543
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
細野 崇 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (80445741)
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研究分担者 |
榎元 廣文 帝京大学, 理工学部, 准教授 (30609392)
財満 信宏 近畿大学, 農学部, 教授 (40455572)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / リン脂質 / ドコサヘキサエン酸 / クリルオイル / 魚油 / スコポラミン |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)は、進行性の神経変性によって認知機能が徐々に失われ、日常生活に支障が生じる病気である。これまでに、ADモデルマウスに魚油含有高脂肪飼料を給餌すると、ラード含有高脂肪飼料を給餌したマウスと比べて認知機能の低下が抑制されること、各飼料の給餌によって脳内のリン脂質組成が変化することを見出している。本研究では、食餌を介して脳のリン脂質組成を変化させることで、AD予防ができるか、明らかにすることが目的である。 本年度は、以下の2点をについて検討した。 (1)異なる種類の脂質を含有する飼料を野生型マウスに給餌することで、脳をはじめとする組織中の脂質組成(特にリン脂質組成)がどのように変化するかを経時的に評価した。これにより、脳をはじめとする体内に移行、蓄積しやすい脂質の形態を明らかにすることが目的である。中性脂質で構成されるラード、または魚油を脂質源とした飼料、主にリン脂質で構成される南極オキアミ由来のクリルオイルを脂質源とした飼料をマウスに給餌した後、脳内リン脂質組成について、質量分析イメージングを用いて評価した。その結果、魚油やクリルオイル含有飼料を給餌したマウスでは、高度多価不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)を含有するリン脂質が増加した。 (2)各飼料を給餌したマウスの認知機能について、スコポラミンによる急性健忘症モデルを用いて評価した。ラード含有飼料を給餌したマウスと比べて、魚油やクリルオイル含有飼料を給餌したマウスで認知機能の改善が認められた。以上のことから、魚油やクリルオイルの摂取は脳内リン脂質中のDHA量の増加させ、認知機能に影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルツハイマー病モデルマウスを用いてDHA含有脂質に認知機能の改善作用が認められるかを確認する第1段階として、野生型マウスに魚油やクリルオイル含有飼料を給餌することで、脳内にDHA含有脂質が顕著に増加することを確認した。さらに、薬物誘導性の急性健忘症モデルであるスコポラミンを用いて、DHA含有脂質に急性健忘症を改善することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、アルツハイマー病モデルマウスを用いてDHA含有脂質に認知機能の改善作用が認められるか、各種脂質含有飼料を給餌している。アルツハイマー病モデルマウスの認知機能改善作用の確認実験には半年程度必要であるが、本年度中には行動試験の結果が得られる予定である。
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