研究課題/領域番号 |
22H03578
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
須藤 克弥 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (70821867)
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研究分担者 |
佐藤 光哉 電気通信大学, 人工知能先端研究センター, 助教 (60822533)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | SWIPT / IRS / 無線環境認識 / 機械学習 / コンピュータビジョン / ビームフォーミング |
研究実績の概要 |
本研究では,室内で遮蔽物が存在する環境において,送信局を中心とした 10 メートルの範囲で最大 50 Mbps のスループットを達成しつつ,10 dBm (10 ミリワット)のハーベスト電力を供給する情報・電力同時伝送システム(SWIPT: Simultaneous Wireless Information and Power Transfer)の実現を目指す.これに向けて位相シフト機能を備えた複数の素子で構成される知的反射板(IRS: Intelligent Reflecting Surface)を利用し,遮蔽物を迂回した高品質な電波伝搬パスを構築するSWIPT-IRSシステムを想定し,以下の要素技術について理論検討を行った. 1)統計的機械学習によるSWIPT-IRSシステムの性能解析環境構築:電波伝搬過程をグラフで表現し,少量の学習データで学習した軽量のFFNNを設計し,高速かつ高精度に高い電波伝搬推定精度を達成できることを示した. 2)統計的機械学習によるSWIPT-IRSの最適配置設計:送信機とIRSの配置問題について,ベイズ最適化により少ないサンプルで最適な送信機配置を手法と送信機が配置された状況で得られる電波環境情報を用いて畳み込みニューラルネットワークにより無線品質を最大化するIRS配置を決定する手法を設計し,最適配置設計問題を実時間で計算できることを示した. 3)コンピュータビジョンを用いた伝搬パス最適制御:IRSは信号処理機能を持たない中継機であるため,送信機と受信機が非見通しの環境では通信路情報を用いてシステム全体が最適なビームを決定することが難しい.そこで,IRSが自身に具備されたカメラを用いて受信者を特定して最適な位相シフトを制御する方式を提案すると共に,数理解析により本システムの平均データレートと平均給電能力を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題1(SWIPT-IRSシステムの性能解析環境構築),研究課題2(SWIPT-IRSの最適配置設計),研究課題3(伝搬パス最適制御)について,いずれも研究課題を明確に整理した上でそれぞれに有効な手法を提案している.計算機エミュレーションによりその効果を評価しており,一部の手法については従来手法の特性を大幅に改善するなど学術的に貢献度の高い成果を上げているなど計画以上の速度とインパクトで研究が進んでいる.本年度は,国際会議論文3件(内,受賞1件),国内学会6件,招待講演2件を発表している.提案時目標と比較して論文誌が未達であるが,各研究課題について成果が十分にまとまってきているため,次年度以降の学術論文発表件数は加速するものと期待できる.国際連携を積極的に進めている.当該発表中1件は海外の研究者との共同研究のもと生まれた成果であり,学術論文誌で特集号(MDPI Sensors Special Issue on RF Energy Harvesting and Wireless Power Transfer for IoT)を企画するなど国際的な学術発展に貢献している.さらに,本研究成果の一部をベースとして複数の企業と共同研究が開始しており,産業界への貢献にも今後大きく寄与できるものである. 以上の進捗状況と成果からおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,統計的機械学習と数理解析によりSWIPT-IRSのスループット・給電目標を達成するための条件や環境を明らかにしてきているが,時間,空間,周波数をより有効に利用するための基盤技術の確立が必要不可欠である.そのため,研究課題1(SWIPT-IRSシステムの性能解析環境構築)をベースして厳密な電波環境を模擬した上で,研究課題2(SWIPT-IRSの最適配置設計),研究課題3(伝搬パス最適制御)を統合的に設計していく.具体的には,機械学習に基づく高速な電波伝搬推定を行うことで,SWIPT-IRSの最適配置設計をより高速かつ高精度に行う.さらには,機械学習に基づく高速な電波伝搬推定により取得した伝搬パス情報を用いることで,統計的な通信路情報とコンピュータビジョン情報を用いたビーム設計技術を設計し,システム性能を最大化する. さらには,実環境での検証も進めていく.企業との共同研究体制を2023年度までに整えており,想定システムもしくは通信機能の一部を実環境で評価し,論文としてまとめることで学術界・産業界に大きな貢献を果たす.
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