研究課題/領域番号 |
22H03597
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
研究代表者 |
田中 譲 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 総合科学研究センター, 特任研究員 (60002309)
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研究分担者 |
野口 孝文 北海道大学, 情報基盤センター, 訪問研究員 (20141856)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 六角形格子座標 / 六角形格子インデキシング / 六角形格子階層分割 / 離散的グローバルグリッドシステム / 量子化軌跡データ |
研究実績の概要 |
課題A:Eisenstein整数の集合Z(ω)におけるイデアルI(2+ω)として六角形格子座標を捉え、剰余環I(2+ω)/I(2↑(2k)(2+ω))として六角形格子の口径2↑(2k)の階層分割を定義した。これがZ(ω)/I(2↑(2k))と同型であることを用い、口径内座標の各次元k-bitの2の補数表現がZ(ω)/I(2↑(2k))の座標になり、前者の六角形格子のインデクスとなることを示した。これに基づき、六角形格子座標における各種GIS操作を代数演算として定義した。分解能の変更に伴うインデックス変換や、一定距離内の近傍セルのリスト生成、回転、拡大縮小、直線近似等を含む。 課題B:量子化誤差2m(1m)以内で、日本領土全域の任意の位置を40bit(42bit)以内で識別可能にした。以下の例のような軌跡データを128bit内に検索可能形式でデータ圧縮することを実現した。先頭に起点の絶対位置も含める。(例1)量子化誤差2mで1分毎に20点(3秒間隔)からなる徒歩の軌跡データ。(例2)除排雪作業車の前後進作業を含む作業中の時速25km以下での移動に対し、量子化誤差2mで1分毎12点(5秒毎)からなる軌跡データ。(例3)高速道路走行に関して8mの量子化誤差で1分間に6点からなる軌跡データ。 課題E:ELTRES LPWA用チップを用いて送信ノードを開発し、課題Bの成果を実装し、高頻度サンプリング、高圧縮の軌跡データ取得送信端末を試作開した。受信サーバ並びに、受信データの展開と可視化分析を行うクライアント・システムを開発した。このシステムを用いて車と徒歩によるラスト・ワン・マイル配送の準実時間軌跡モニタリングの実証実験を行った。 課題F:スマートオブジェクトの近傍領域を六角形格子座標系の口径で定義する近傍近接フェデレーション計算モデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は、以下の6課題の遂行を目標とする。 課題Aでは、2の偶数冪の口径の六角形格子座標とインデクシング法、階層分割の代数理論の構築を行う。課題Bでは、提案の六角形格子座標理論に基づく位置の量子化を用いた軌跡最適データ圧縮法と検索に関する理論構築を行う。課題Cでは、2の3k乗の口径を持ち階層分割可能な3次元格子座標理論への拡張を行う。課題Dでは、提案の六角形格子座標理論のDGGSへの拡張を行う。課題Eでは、提案する軌跡データ圧縮法を、ELTRES LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークを用いた量子化軌跡データの取得に応用し、1分間に128bitの送信のみが可能という極めて制約された通信容量の下で、高分解能/高サンプル頻度の軌跡データ取得を実証的に実現する。課題Fでは、スマートオブジェクトの近傍領域を六角形格子座標系の口径で定義する近傍近接フェデレーション計算モデルの構築と地域BWAを用いた応用システムの研究開発を行う。
課題C,Dは次年度から実施する計画であった。他の課題は、研究実施の概要に記載のように、計画通り実施し、その成果を12月に、計算機科学のトップクラスの国際理論論文誌に投稿し、現在査読結果を待っている。
課題C,Dに関しても、前倒しで研究を行い、課題Cの3次元格子座標理論への拡張に関しては、2つある3次元最密充填格子、面心立方格子と六方最密充填格子の内、後者への理論の拡張に成功した。課題DのDGGS(Discrete Global Grid System)への拡張に関しては、切頂20面体の20個の正六角形面と12個の正五角形面を六角形格子で分割することで、本手法のインデクシング法を拡張適用可能なことを示した。その際、正五角形の数は12のままであるが、正六角形の数が幾つになるかの一般式を明らかにした。球面への写像は次年度以降の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
軌跡取得用のELTRES LPWA送信端末を課題A,Bの成果に基づいて課題Eの中で研究開発を行ってきた結果、送信端末への低消費電力化技術の導入の必要性と、コミュニティにおける新交通サービス等への適用を目指した実証実験を地方自治体等と密に連携して実施することの重要性が高まってきた。こうした中で、公立諏訪東京理科大学の渡辺毅准教授がELTRES LPWAを応用して、コミュニティにおけるマラソンの軌跡取得や、諏訪におけるオンデマンド交通サービスへの軌跡取得端末の搭載実験などを地域コミュニティと連携して実施していることを知り、そのために電力消費効率の優れた送信端末の開発にも取り組んでいることを知った。渡辺淳教授の方では、軌跡取得のサンプリング頻度は1分間に1回であり、本研究課題で取り組んでいるようなサンプリング頻度で軌跡取得を行って送信することは実現できていない。両者の共同研究は双方にとってメリットがあることから、次年度からは渡辺准教授にも分担者として本研究課題に加わっていただくこととした。
現在までの状況に記載のように、現在、研究はかなり前倒しで進捗しているので、次年度以降は、提案手法の新しい応用の掘り起こしにも挑戦し、研究内容の拡充と展開を目指す。
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