研究課題/領域番号 |
22H03621
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
坂本 雄児 北海道大学, 情報科学研究院, 教授(特任) (40225826)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ホロリアリティ空間 / 電子ホログラフィ / ホログラフィックルーム / 視覚特性 / ストレスフリー |
研究実績の概要 |
本研究では、ホロルームによるホロリアリティ空間の実現を念頭に置き、情報量的な立場から電子ホログラフィシステムを捉え、問題を統合的に解決する理論を検討することにある.令和4年度は初年度にあたり,理論的な検討と基礎的な実験を行なった. 1.ホログラフィにおける人間の視覚系が必要とする情報量の理論的検討を行い,必要とされる情報量の概算値を求めた.この結果,ホログラムデータの計算における計算機リソースの削減が可能であることを明らかにした.ただし,人間の視覚系は複雑な特性を持ち,ホログラフィに対しては不明な点も多いことから,引き続きの検討を行う予定である. 2.視覚系の特性を基にホログラムデータのFoveated rendering計算アルゴリズムを検討した.従来は専用の光学系が必要であったが,広い光学系に適応可能なより汎用性の高いアルゴリズムを開発した.これを基にプログラムを開発し,小型電子ホログラフィシステムで実験を行うことによって,アルゴリズムが有効に働くこと,計算機リソースの削減の可能性を確認した. 3.人間の視覚に届かない無用な光波を削減する装置の検討を行い,再生照明光切替方式および収束物体光計算アルゴリズムの有効性を理論的に確認した.これを実現するために,視覚情報検出装置の一部である瞳検出装置を開発,また,瞳が必要とする情報量を持つ光波面を生成する再生照明光切替方式のホログラフィ表示装置の原理実証装置を開発,実験を行いその有効性を確かめた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究計画は,A) 視覚特性を考慮した人間がホロリアリスティックであると認識する情報量の基礎的な算出,B) コンピュータ内の仮想情景より、情報に効率よく変換可能な計算アルゴリズムの必要要件の検討,C) これらを実現するハードウェア,ソフトウェアの原理実験用の小型電子ホログラフィ装置の開発とこれによる基礎的な実験である. A)上記「研究業績」の1に示したように,基礎的な検討は終了し,研究計画時に予想されたように,計算機リソースの削減に有効であることが確認された.これによって,2,3で示したアルゴリズムやその後の装置開発の可能性を示した. B)上記「研究業績」の2,3で示したように,Foveated rendering計算アルゴリズムと収束物体光計算アルゴリズムを開発した. C)上記「研究業績」の2,3で示したように,瞳検出装置を開発と再生照明光切替方式のホログラフィ表示装置の設計を行い,原理実証電子ホログラフィ表示装置を開発した.これを用いた実験を行うことにより上記アルゴリズムと視覚の情報量的なアプローチを組み合わせた方式の有効性を確認することができた. これらの研究結果は,令和4年度の研究計画を満足しているほか,いずれも成功裡に行われており,概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
情報量的なアプローチの確立に向けて、令和5年度は理論をより発展させるとともに,実証用の大型の電子ホログラフィ装置開発を行い,理論と実際の装置開発での相違や問題点などを,理論にフィードバックしながら完成度を高める.令和6年度は開発した装置を用い,実証実験を行う. i)令和4年度に行われたホログラフィにおける人間の視覚系が本来必要とする情報量の理論的検討は不明な点や,詳細に検討すべき点が残っており,これらをより発展させ,より正確な理論を構築する.これは,令和5年度も中心課題の一つとして行い,令和6年度はこれらの理論が正しいかを下記に示す装置を用いて確認する. ii)令和4年度には原理実証用の小型電子ホログラフィ装置を用いて,開発したアルゴリズムやソフトウェア,装置の原理の確認がなされた.これを基に,令和5年度は大型の電子ホログラフィ装置を開発する.この装置の基本原理はほぼ同様であるが,小型装置に比較して以下の点を検討する.a) 大型化による装置の設計方法の問題点の洗い出しと解決不法の研究,b) より詳細な映像を提示することによって.画質や画像の歪みなどの問題点の発見とその解決法の検討,c) 大きな画面のホログラムデータの計算へ適合した計算リソースおよび,アルゴリズムの検討,d) 被験者を対象とした実験を行うには,大型の装置が必要であり,本装置を用いて令和6年度に評価実験を行う.
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