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2023 年度 実績報告書

大脳基底核と小脳の機能を統合したヒト立位姿勢の適応的ハイブリッド制御モデル

研究課題

研究課題/領域番号 22H03662
配分区分補助金
研究機関大阪大学

研究代表者

野村 泰伸  大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (50283734)

研究分担者 佐古田 三郎  独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター, 名誉院長 (00178625)
鈴木 康之  大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 講師 (30631874)
遠藤 卓行  独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター, 研究員(移行) (40573225)
藤本 千里  東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60581882)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード強化学習 / 間欠制御 / 姿勢制御 / むだ時間制御系 / ノイズ誘引性安定化 / ハイブリッド力学系
研究実績の概要

本研究では、ヒト静止立位姿勢の安定化制御に焦点を絞り、基底核と小脳の機能を統合したヒト立位姿勢の適応的ハイブリッド制御モデルを構築し、姿勢安定化戦略の立位環境適応的な変化、および神経疾患(基底核・前庭・小脳疾患)に起因する姿勢不安定化メカニズムの解明を目指している。
2年目の2023年度は、昨年度に引き続き、我々が提唱するヒト静止立位姿勢制御の新しい仮説である間欠制御モデルに着目し、間欠制御戦略が強化学習を通じて獲得される条件、すなわち、即時報酬関数および、プロセスノイズやフィードバック時間遅れを含む学習環境の解明を目指した。その結果、即時報酬関数に関しては、直立姿勢からのずれ(姿勢誤差)の最小化と姿勢制御に要するエネルギー消費パワーのトレードオフのバランス、フィードバック制御の位置(姿勢)誤差修正ゲインと速度誤差修正ゲイン間のバランスをある程度適切に設定することが、強化学習による間欠制御戦略の獲得につながることが明らかになった。
能動的フィードバック制御が作用しない不安定なオフサブシステムと小さなゲインを伴う能動的フィードバック制御が作用する不安定なオンサブシステムの間を状態依存的にスイッチすることで、姿勢ゆらぎを伴いつつロバストかつ低消費エネルギー(高効率)で立位姿勢を安定化することが、我々が提唱する間欠制御の特徴であるが、興味深いことに、このような特徴を有する間欠制御戦略の獲得において、システムを不安定化するある意味マイナス要素であるプロセスノイズやフィードバック時間遅れの存在が重要な役割を果たす可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

研究実績の概要で述べたように、2023年度の大きな成果として、通常システムを不安定化するマイナス要素だと考えられるプロセスノイズやフィードバック時間遅れの存在が、姿勢ゆらぎを伴いつつロバストかつ低消費エネルギー(高効率)で立位姿勢を安定化する間欠制御を強化学習によって獲得に対して重要な役割を果たす可能性が示唆されたことが挙げられる。この結果は、ノイジーな環境の中で適応的かつグリーディーに制御の目的を達成する脳内情報処理の普遍性を反映している可能性があり、今後の研究の発展につながる重要な成果だと考えている。

今後の研究の推進方策

時間遅れ(むだ時間)がある制御系における強化学習を深層ニューラルネットワークの枠組みで実装することで、2023年度に得られた成果の一般化を進める計画である。特に、2023年度までの研究で明らかにされた報酬関数のもとで獲得される間欠制御を含む制御戦略が、プロセスノイズとむだ時間にどのように依存するかを定量的に明らかにする予定である。
さらに、小脳の機能と考えられているフィードフォワード制御に基づく予測制御によってむだ時間の影響が補償されるような強化学習系と、そのような予測の精度がノイズによって影響を受ける強化学習系を比較することで、通常システムの安定化をもたらすとされる予測制御と、逆にシステムの不安定化をもたらすとされるノイズやむだ時間の存在が、立位姿勢制御系に対してどのような(ポジティブな)影響を与えるかを明らかにする予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Italian Institute of Technology(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      Italian Institute of Technology
  • [雑誌論文] A Markov chain approximation of switched Fokker?Planck equations for a model of on?off intermittency in the postural control during quiet standing2023

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Yasuyuki、Togame Keigo、Nakamura Akihiro、Nomura Taishin
    • 雑誌名

      Communications in Nonlinear Science and Numerical Simulation

      巻: 126 ページ: 107488~107488

    • DOI

      10.1016/j.cnsns.2023.107488

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Discrete cortical control during quiet stance revealed by desynchronization and rebound of beta oscillations2023

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Akihiro、Miura Ryota、Suzuki Yasuyuki、Morasso Pietro、Nomura Taishin
    • 雑誌名

      Neuroscience Letters

      巻: 814 ページ: 137443~137443

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2023.137443

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] フィードバック遅れ時間存在下における倒立振子安定化課題の深層強化学習と ヒト静止立位の間欠制御戦略2024

    • 著者名/発表者名
      松尾理沙,鈴木 康之,中村 晃大,野村 泰伸
    • 学会等名
      2023年度 計測自動制御学会関西支部・システム制御情報学会シンポジウム
  • [学会発表] Intermittent control during human quiet stance: a greedy strategy for postural stabilization2023

    • 著者名/発表者名
      Taishin Nomura
    • 学会等名
      International Society for Posture and Gait Research World Congress 2023
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 倒立振子バランスの間欠フィードバック制御に関連する脳波計測と解析2023

    • 著者名/発表者名
      林佳那人, 中村晃大, 鈴木康之, 野村泰伸
    • 学会等名
      自律分散システム・シンポジウム(CD-ROM) 35th
  • [学会発表] ヒト静止立位姿勢動揺に連動した床面移動外乱が姿勢動揺に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木康之, 三浦涼大, 中村晃大, 野村泰伸
    • 学会等名
      日本生体医工学会大会プログラム・抄録集(Web) 62nd
  • [学会発表] ヒト静止立位姿勢を安定化させる間欠制御戦略の深層強化学習による獲得2023

    • 著者名/発表者名
      松尾理沙,鈴木 康之,中村 晃大,野村 泰伸
    • 学会等名
      第17回モーターコントロール研究会

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公開日: 2024-12-25  

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