感性個人差指標 Affect-X の構築とビスポークAIサービスの基盤確立

2022 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 22H03681
• 配分区分: 補助金
• 研究機関: 関西学院大学
• 研究代表者: 長田 典子 関西学院大学, 工学部, 教授 (50368453)
• 研究分担者: 橋本 学 中京大学, 工学部, 教授 (70510832) ; 荷方 邦夫 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 教授 (40347357) ; 飛谷 謙介 長崎県立大学, 情報システム学部, 准教授 (50597333) ; 破田野 智美 (竹澤智美) 甲子園大学, 心理学部, 講師 (50425039) ; 橋本 翔 西南学院大学, 商学部, 講師 (80756700) ; 井村 誠孝 関西学院大学, 工学部, 教授 (50343273) ; 山本 倫也 関西学院大学, 工学部, 教授 (60347606) ; 山崎 陽一 関西学院大学, 工学部, 講師 (90780148) ; 杉本 匡史 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (50761342) ; 都賀 美有紀 関西学院大学, 工学部, 助教 (90774050) ; 張 帆 関西学院大学, 工学部, 助教 (30825328)
• 研究期間 (年度): 2022-04-01 – 2025-03-31
• キーワード: 感性個人差指標 / 感性転移 / 個人最適化 / ビスポークAIサービス / 触感プロセッシング

研究実績の概要

本研究では、個々人に固有な感性的特性を表現可能とする新しい感性個人差指標Affect-X の構築を目指すとともに、指標を再現性良く計るための意識的・無意識的な心的状態の計測・推定技術の開発を行う。３つの課題に対する本年度の実績は以下のとおりである。
【研究課題１】個人の感性的特性を表現可能な感性個人差指標Affect-Xの開発：人間の感性における個人特性を表現するための統合モデルAffect-Xとして、物性層－印象層－価値・感情層からなる階層モデルを提案した。また本モデルに基づいた五感および価値に関するモデル構築を行った。具体的には布柄質感、加飾フィルム、音楽和音、飲料、香料、空間認知など、計10種類のドメインに対する個人特性のモデルを構築した。
【研究課題２】意識的・無意識的な心的状態の計測・推定技術の確立：個人の心的状態の客観的計測を目的として、まず多様な対象やモダリティを対象に、心理学・神経科学の両面から妥当性を有する生理・心理・行動データが対応付いた精密な感性データセットの構築を行った。具体的には動画視聴、触覚体験、味覚体験、空間認知等における感性データセットを収集した。
【研究課題３】個人最適化によるビスポークAIサービスの基盤確立：課題１で統計的に得られたAffect-Xプロトタイプモデルに基づき、転移学習を活用して、
あるドメインにおける感性プロフィールから他ドメインにおける感性プロフィールの予測を行う(感性転移)技術を開発する。今年度は同じドメイン内（布柄質感認知）での感性転移を行うアルゴリズムを開発した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究課題１については、計画当初は五感それぞれに対する具体的なモデルをたてることを目標としていたが、実際にはその2倍となる10種類のドメインに対するモデル構築を行うことができた。研究課題２についても、３つのドメインについて、良好なデータセットを構築することができた。研究課題３については、感性転移を行うアルゴリズムの実装は終わり、精度面での改良が課題となっているが、見通しは得ている。
これら成果について、論文３編、学会発表32本等にまとめることができたため、概ね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

研究課題１については、前年度構築した複数の具体的なモデルデータを用いて、アフェクトXの妥当性検証を行っていく。 研究課題２については、AI技術を用いてマルチチャネル、時系列による主観的情報と客観的情報を融合した心的状態の推定モデルの構築技術の開発に取り組む。研究課題３については、引き続き感性転移アルゴリズムの開発に取り組む。

研究成果

• [雑誌論文] スマートフォン用保護フィルムの感性評価モデルの構築 (2023)
  • 著者名/発表者名: 濱田大佐, 杉本匡史, 山﨑陽一, 長田典子, 高原秀起, 竹厚流, 加藤早紀
  • 雑誌名: 日本感性工学会論文誌 巻: 22 ページ: 207～216
  • DOI: 10.5057/jjske.TJSKE-D-22-00048
  • 査読あり
• [雑誌論文] ビスポーク場面における販売員の発話内容のモデル化とコミュニケーションロボットを用いた実験による評価 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小林史弥, 杉本匡史, 青柳西蔵, 山本倫也, 長田典子
  • 雑誌名: ヒューマンインタフェース学会論文誌 巻: 24 ページ: 263～272
  • DOI: 10.11184/his.24.4_263
  • 査読あり
• [雑誌論文] 感性工学的手法に基づく触感予測モデルの構築と評価～布地触感予測の実現～ (2022)
  • 著者名/発表者名: 山﨑陽一, 飛谷謙介, 谿雄祐, 井村誠孝, 亀井光仁, 長田典子
  • 雑誌名: 電気学会論文誌C 巻: 142 ページ: 616～624
  • DOI: 10.1541/ieejeiss.142.616
  • 査読あり
• [学会発表] 天然・合成香料のための感性指標の構築と好ましさとの関係性に基づく個人の類型化 (2023)
  • 著者名/発表者名: 村上柚香, 都賀美有紀, 長田典子, 綿村豪, 三瓶和也, 寺本圭吾
  • 学会等名: 電子情報通信学会 MVE研究会
• [学会発表] Texture synthesis based on aesthetic texture perception using CNN style and content features (2023)
  • 著者名/発表者名: Sugiyama Y, Sunda N, Tobitani K, Nagata N
  • 学会等名: International Workshop on Frontiers of Computer Vision (IW-FCV2023)
  • 国際学会
• [学会発表] Impression estimation of suit patterns based on style features using multi-scale CNN (2023)
  • 著者名/発表者名: Tsumura E, Tobitani K, Toga M, Nagata N
  • 学会等名: International Workshop on Frontiers of Computer Vision (IW-FCV2023)
  • 国際学会
• [学会発表] 和音性印象構造モデルに基づく感情特性の個人差分析. 情処研報 (2023)
  • 著者名/発表者名: 西田智徳, 片平建史, 岡崎聡, 山﨑陽一, 長田典子
  • 学会等名: 情報処理学会 第136回MUS研究発表会
• [学会発表] 強化学習を用いたピアノ訓練における報酬と罰の効果の評価. 第9回国際会議既発表・デモ・萌芽・議論セッション (2023)
  • 著者名/発表者名: 木野伊祐, 山﨑陽一, 岡崎聡, 長田典子
  • 学会等名: 情報処理学会 第136回MUS研究発表会
• [学会発表] スマートフォンケースの視覚・視触覚間印象差による予想価格変化率の階層モデリング (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本悠, 飛谷謙介, 山﨑陽一, 長田典子
  • 学会等名: 第18回日本感性工学会春季大会
• [学会発表] 評価グリッド法によるサステナビリティ感と高級感の構成要素の比較 (2023)
  • 著者名/発表者名: 都賀美有紀, 杉本匡史, 山﨑陽一, 破田野智己, 長田典子, 福田浩明, 高田耕二
  • 学会等名: 第18回日本感性工学会春季大会
• [学会発表] ラバン行動分析に基づく動画視聴時における感情推定のための特徴量についての検討 (2022)
  • 著者名/発表者名: 藤原太, 小林史弥, 青柳西蔵, 杉本匡史, 山本倫也, 長田典子
  • 学会等名: 第190回ヒューマンインタフェース学会研究会
• [学会発表] 船舶事故場面における操船者のリスク認知プロセスの時系列分析 (2022)
  • 著者名/発表者名: 上田真由子, 杉本匡史, 長田典子, 西崎ちひろ, 田丸人意, 村井康二
  • 学会等名: 第40回日本生理心理学会大会・日本感情心理学会第30回大会 合同大会
• [学会発表] Fast-Response Pen-Type Interface for Reproduce a Realism Pen-on-Paper Experience (2022)
  • 著者名/発表者名: Watanabe R, Yamazaki Y, Imura M
  • 学会等名: HCI International 2022 Posters
  • 国際学会
• [学会発表] Resistive-Force Presentation Device Using Magneto-Rheological Fluid for Wrist-Joint Stiffness Control (2022)
  • 著者名/発表者名: Funabiki T, Yamazaki Y, Imura M
  • 学会等名: HCI International 2022 Posters
  • 国際学会
• [学会発表] 3Dプリンタを利用した触感再現の研究(第2報) (2022)
  • 著者名/発表者名: 長内心, 山崎陽一, 長田典子, 田中浩也, 仲谷正史
  • 学会等名: ロボティクス・メカトロニクス講演会2022 (ROBOMEC 2022)
• [学会発表] 感覚・感性セッション「AI・ビッグデータを用いた感性評価技術」 (2022)
  • 著者名/発表者名: 長田典子
  • 学会等名: 第4回 使えるセンサ・シンポジウム2022
  • 招待講演
• [学会発表] 感情円環モデルを帰納バイアスとした動画像表情認識のためのDeep Neural Tree (2022)
  • 著者名/発表者名: 三好遼, 秋月秀一, 飛谷謙介, 長田典子, 橋本学
  • 学会等名: 第25回 画像の認識理解シンポジウム (MIRU2022)
• [学会発表] テクスチャ触感認知における撫でる方向の影響 ～布地を対象とした検討～ (2022)
  • 著者名/発表者名: 山﨑陽一, 藤原大志, 長田典子
  • 学会等名: 電気学会 知覚情報・次世代産業システム合同研究会
• [学会発表] AI・ビッグデータによる感性価値創造 (2022)
  • 著者名/発表者名: 長田典子
  • 学会等名: 2022年度 第2回 光材料・応用技術研究会
  • 招待講演
• [学会発表] 共通・独自因子得点による重回帰分析について (2022)
  • 著者名/発表者名: 橋本翔
  • 学会等名: 日本行動計量学会第50回大会
• [学会発表] CNN 特徴量を用いた感性的質感認知に基づくテクスチャ生成 (2022)
  • 著者名/発表者名: 杉山幸音, 飛谷謙介, 長田典子
  • 学会等名: 第24回日本感性工学会大会
• [学会発表] 感性印象に基づくエッセンシャルオイルのマップ構築－専門家による香りの感性印象尺度－ (2022)
  • 著者名/発表者名: 竹澤智美, 破田野智己, 長田典子, 千葉正貴, 小池梢, 深津恵, 片岡郷
  • 学会等名: 第24回日本感性工学会大会
• [学会発表] AwareLab: 振動提示による第一人称射撃ゲーム内の足音の聞き取りと正しい判断のための訓練システム (2022)
  • 著者名/発表者名: 張振沢, 山崎陽一, 井村誠孝
  • 学会等名: 情報処理学会 エンタテインメントコンピューティングシンポジウム (EC2022)
• [学会発表] 感性の指標化～AI・ビッグデータによる感性価値創造～ (2022)
  • 著者名/発表者名: 長田典子
  • 学会等名: 電子情報通信学会 魅力工学研究会シンポジウム2022
  • 招待講演
• [学会発表] 専門家の類似度判断に基づくエッセンシャルオイルの香りの可視化 (2022)
  • 著者名/発表者名: 破田野智己, 竹澤智美, 長田典子, 千葉正貴, 小池梢, 深津恵, 片岡郷
  • 学会等名: 日本心理学会第86回大会
• [学会発表] 共創場面における共愉的な協働の特質 (2022)
  • 著者名/発表者名: 荷方邦夫
  • 学会等名: 日本認知科学会第39回大会
• [学会発表] 心理学的感情円環モデルを帰納バイアスとした表情認識手法の提案 (2022)
  • 著者名/発表者名: 三好遼, 秋月秀一, 飛谷謙介, 長田典子, 橋本学
  • 学会等名: 第27回日本顔学会大会 (フォーラム顔学2022)
• [学会発表] Convolutional Neural Tree for Video-Based Facial Expression Recognition Embedding Emotion Wheel as Inductive Bias (2022)
  • 著者名/発表者名: Miyoshi R, Akizuki S, Tobitani K, Nagata N, Hashimoto M
  • 学会等名: 2022 IEEE International Conference on Image Processing (ICIP2022)
  • 国際学会
• [学会発表] 感性価値とテレワーク (2022)
  • 著者名/発表者名: 渋田一夫
  • 学会等名: 日本テレワーク学会 第27回アカデミックサロン
  • 招待講演
• [学会発表] AI・ビッグデータによる感性評価技術 (2022)
  • 著者名/発表者名: 長田典子
  • 学会等名: 日本油化学会 油脂実践講座2022
  • 招待講演
• [学会発表] Individual differences analysis of affective traits for chord listening -Study of triads- (2022)
  • 著者名/発表者名: Nishida T, Yamazaki Y, Nagata N
  • 学会等名: 1st. STACY Young Generation Symposium
  • 国際学会
• [学会発表] Textile-GAN: Texture synthesis based on affective evaluation with generative adversarial networks (2022)
  • 著者名/発表者名: Taniguchi F, Tobitani K, Nagata N
  • 学会等名: 1st. STACY Young Generation Symposium
  • 国際学会
• [学会発表] Pattern design bespoke system considering individual differences in affective evaluation using multi-task CNN (2022)
  • 著者名/発表者名: Yamashita N, Tobitani K, Hashimoto S, Toga M, Nagata N
  • 学会等名: 1st. STACY Young Generation Symposium
  • 国際学会
• [学会発表] Domain adversarial neural networks regression to design transferable impression estimation model for clothing patterns (2022)
  • 著者名/発表者名: J N Htoi Sann Ja, Tobitani K, Nagata N
  • 学会等名: 1st. STACY Young Generation Symposium
  • 国際学会
• [学会発表] Individual differences analysis of affective traits for chord listening -Study of tetrads- (2022)
  • 著者名/発表者名: Sakamoto S, Yamazaki Y, Nagata N
  • 学会等名: 1st. STACY Young Generation Symposium
  • 国際学会
• [備考] 関西学院大学 感性価値創造インスティテュート
  • URL: https://ist.ksc.kwansei.ac.jp/~nagata/kvc/