研究課題/領域番号 |
22H03701
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
コリー 紀代 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (80431310)
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研究分担者 |
二宮 伸治 広島国際大学, 保健医療学部, 教授 (60237774)
金井 理 北海道大学, 情報科学研究院, 特任教授 (90194878)
近野 敦 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (90250688)
井上 創造 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (90346825)
中村 美鈴 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10320772)
小水内 俊介 香川大学, 創造工学部, 准教授 (40708004)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | VR/AR/MR/XR / 医療的ケア / 看護教育 / 気管内吸引 / 触覚呈示 / 人工呼吸器 / 学習評価 / カリキュラム評価 |
研究実績の概要 |
研究者らは今まで、ダイナミックプロジェクションマッピング技術を用いた気管内吸引シミュレータ(ESTE-SIM)を共同開発し、吸引カテーテル操作の巧緻による表情や顔色の変化などの生体反応を呈示するシミュレータとして開発と評価を継続してきた。また、シミュレータを用いた教育における学習効果の客観的指標として、看護師群と学生群の視線と動作解析により学習効果を検証してきた。そこで本研究の目的は、①医療事故の体験も可能な在宅人工呼吸器の複合現実シミュレータを開発し、②機械学習を用いた特徴量抽出による学習評価アルゴリズムの構築の2つを目的としている。
2023年度までに、①については、人工呼吸器測定値モニタの波形変化を体験可能なアプリ(Simmar:二宮研究室開発)をESTE-SIMを統合し、「人工呼吸器装着中の気管内吸引」がトレーニング可能なシミュレータ(Simmar+ESTE-SIM)を開発した。本シミュレータは、管見の限り「世界初」の人工呼吸器XRシミュレータであり、「手技に応じた生体反応を呈する看護シミュレータESTE-SIMと人工呼吸器シミュレータSimmarの統合」としてSI2023にて発表した(小水内ら,2023)。専門分野を問わず反響が大きく、日本ロボット学会誌、Precision Medicineより原稿執筆依頼があった。2023年12月には基幹技術の特許を取得しており、現在、論文を投稿中である。②に関しては、The 5th International Conference on Activity and Behavior Computing(ABC2023),Best Paper Awardを獲得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
在宅人工呼吸器や気管内吸引・経管栄養という医療的ケアを必要とする18歳以下の在宅療養児数は、約10年間に倍増しており、全年齢においても全国的に増加傾向であったため、人工呼吸器を操作できる看護師の不足が課題とされていた。そこへCOVID-19パンデミックにより、人工呼吸器を操作できる看護師の不足に拍車がかかり、急性期病棟における医療崩壊と在宅入院待機者の急死という新たな社会問題が浮上している。解決法には教育法の改革が必須となるが、現在、人工呼吸器管理の主たる教授法は病棟実習における見学、あるいは免許取得後のOn the Job Trainingとなっており、「教育と臨床の乖離」が新人看護師の離職率、医療的ケアを担える看護師の不足の一因となっていた。そのため、本研究においては、医療的ケアをトレーニングできるシミュレータの開発に着手し、2023年9月に人工呼吸器トレーニングアプリ(Simmar)と気管内吸引ダイナミックプロジェクションマッピングシミュレータ(ESTE-SIM)の統合に成功し、「人工呼吸器装着中の気管内吸引」がトレーニング可能な環境を構築できた。
2023年4月現在、札幌、東京、広島にシミュレータの設置拠点を展開し、関心を持つ研究者・教育者・実践者とのネットワーク形成を目指し、学習評価尺度、教育プログラム開発、実施、カリキュラム評価尺度の開発、シミュレータに必要な機能の決定等に関し、複数大学における共同開発体制の構築に向け、準備を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、Simmar+ESTE-SIMを国内の3拠点に展開したため、複数拠点におけるSimmar+ESTE-SIMの体験会を実施する。体験会の対象者は、周囲の看護系大学教員とし、シミュレータの機能や学習効果、使用感に関する課題を明確化するためのアンケート調査を行う。我々の今までの研究においては、シミュレーション教材開発による学習効果の向上を主眼としてきたが、医療的ケア児が多く居住する地域とそうでない地域があるように、大学が設置されている地域により、看護教育者がシミュレータに求める機能が異なることが考えられるため、教育者側のニーズを明らかにする必要があると考える。
共同開発を進めてきた人工呼吸器XRシミュレータは、管見の限り「世界初」の人工呼吸器XRシミュレータである。今後は、シミュレータの実用化に向けた助成獲得に向け、企業との連携を深める。AMED、A-STEPほか、助成の目的、種類等を把握し、社会実装に向けた研究・開発を継続する。
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