研究課題/領域番号 |
22H03708
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
島川 博光 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (70351327)
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研究分担者 |
西原 陽子 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (70512101)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 計算論的思考 / 見通し / 関数呼び出し / 描画特徴 / 状態遷移 |
研究実績の概要 |
基本となる解法を組み合わせ、適用環境でのさまざまな制約を充足する計算論的思考はプログラミングと同じように問題解決に向けた見通しを立てる力であると本研究ではみなす.プログラミングに従事しているときに,計算論的思考を対象者ができているかを、本研究で定量的に推定する方法を提案し,実験により評価した.さらに,PCを使って論理的な文章を書くタスクにおいて、計算論的思考を使っているときには,少数の状態の各々に長く滞在することが判明した.この知見を利用し,少数状態の各々への滞留をモデル化する手法を構築した. まず,プログラミングに従事している被験者がどのような見通しをもっているかを関数呼び出しの頻度から評価する方法を実験により評価した.正解までの見通しを持っている被験者は,正解で使用されている関数呼び出しと同じものを自らの回答の中で記述する.よって,呼び出せる関数を適切に制御した問題のもとでは,被験者の回答に至るまでの見通しを確度高く推定できることを示した. さらに,描画タスクを取り上げ,見通しを持っているものとそうでないものを,描画階層の遷移やペンの使い方から見分ける方法を考案した.被験者に,デッサン,線画,清書といった階層に分けて描画してもらったとき,見通しのある者は階層を行き来しないことがわかった.また,見通しがある被験者は,ペンの仰角が大きくなることが判明した.仰角が大きくなることは丁寧に描いているときに起こる所作である. 対象者が見通しを持てているかや,計算論的思考について言語・非言語の面から分析を補助する手法も研究した.作業中の顔表情の感情分析や,対象者が語った内容の感情分析,情報量の分析を行う基礎的な手法を実装し,評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,被験者がどのような見通しをもっているかを定量的に評価する方法の有効性を実験により評価することを計画していた。計画通り,プログラミングにおける見通しをたてている度合いを評価できる手法が構築できた.さらに,プログラミング以外のタスクとして,描画タスクにおいても,定量的な評価ができる手法を提案できた. プログラミングは,計算論的思考力を育成するうえで重要なタスクと言われており,このタスクにおいて定量手法を提案できた意義は大きいと考える.さらに,プログラミング以外のタスクにおける定量手法も確立できた.これにより,プログラミングを知らない年少の児童や学生においても,計算論的思考力を測定し,育成することができると考えられる. この成果により,計算論的思考力を育成するための指導上の要訣を見つけるための基礎が固まったと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施した実験により、PCを使って論理的な文章を書くタスクにおいては、PCをじっと見つめるというふるまいは取られず、むしろ、PCの画面から視線が離れることが多いことが判った。さらに、顔の向きなどを調べると、一定の状態にしばらく滞在してから、別の状態にしばし滞在していることが判明した。2023年度に、この少数状態への滞留をモデル化する手法の構築に着手し,実験を進めている.2024年度に,この手法を確立することに取り組む。現在のところ,対象者のタスクに取り組む意欲を向上させるように介入することが有効であるという知見を得ている.これを実験により確かめる. 上記のような方法を,プログラミングにおけるタスクと,プログラミング技量を必要としないタスクにおいて,実現し,その有効性を評価する予定である.
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