研究課題
大気エアロゾルの重要な発生プロセスである新粒子生成(New Particle Formation: NPF)は、最終的に雲凝結核の濃度を決定付け、地球の気候に影響を与える。本研究では、能登半島先端の観測拠点を舞台に、①大気エアロゾル、およびその前駆ガスを観測し、②エアロゾル動力学、大気化学、大気電磁気学の見地から多角的・包括的な解析を行い、冬季雷に代表される日本海側地域の季節風が織りなす、特有の新粒子生成メカニズムを明らかにすることを目的としている。令和4年度は、定期的に現地で装置の校正を行いつつ、基盤データとなるエアロゾル粒径分布、ガス成分などオンラインで観測できる項目について連続観測を行った。当初の計画どおり、11月にはVOCなどのオフラインで観測する項目の分析頻度を増やし集中的な観測を行った。これと同期する形で、能登半島の風上にあたる中国(北京)、韓国(ソウル)、モンゴル(ウランバートル)などの大気観測サイトでも共通の項目を対象とした観測が行われており、同時期の観測データが共有できる連携体制も整えることができた。新たに比較対象地域が加わり、東アジアのその他の地域におけるNPFの発生状況との比較が可能になることで、能登半島におけるNPFの特徴がより浮き彫りになるものと期待される。また、NPFによって生じる大気中で生成間もないナノ粒子の連続観測を念頭に、新たに大気イオン測定器を導入し、実大気観測にむけた動作試験や改良を行い観測基盤を整えた。
2: おおむね順調に進展している
ここ数年能登半島の先端では地震活動が活発化しており、今年度6月にも大規模な地震が発生しているが、幸いにも観測拠点の被害は最小限に留めることができた。観測の継続が危ぶまれる想定外の事態が起きている中でも、全体として計画に大きな遅れを生じることなく、現状おおむね順調に推移していると判断できる。
次年度以降も、引き続き基盤データとなるエアロゾル粒径分布、そのほかの気体成分などオンラインで観測できる項目については可能な限り連続観測を続ける。NPFの頻度が高くなる春季と冬季をそれぞれ集中観測期間と位置づけ、新たに大気イオンを観測対象に加えるとともに、手動で行うオフライン観測については期間を絞って短期集中的に行う。また、NPFと雷雲活動との関連性を検討するため、電波観測ネットワークやデータベースを用いて雷雲の接近、雷放電の時空間的な追跡を行う。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 6件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 19件) 備考 (1件)
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