研究課題/領域番号 |
22H03740
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
安井 博宣 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (10570228)
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研究分担者 |
稲波 修 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10193559)
平田 拓 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (60250958)
久下 裕司 北海道大学, アイソトープ総合センター, 教授 (70321958)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生体金属 / イメージング / レドックス / がん微小環境 / 放射線 |
研究実績の概要 |
本研究では、「正常細胞とがん細胞におけるX線照射後の遷移金属や関連因子の動態がレドックス状態や細胞死にどのような影響を与えるのか?また、イメージング等検出技術によってそのメカニズムを解明することで、生体金属の恒常性破綻をがん放射線治療のアプローチとすることが可能か?」という問いに対し、2023年度では(2)増感標的となる分子の決定と実験的治療検討をin vitroで行うことおよび(3)in vivoでの検討とイメージングへの展開を目的とした。研究成果として、銅イオノフォアであるElesclomolを用いて、HCT116細胞やMIA-Paca-2細胞においてピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ阻害剤ジクロロ酢酸(DCA)や乳酸脱水素酵素阻害剤FX11と併用した際に生じるElesclomolの細胞毒性の増強作用についてメカニズムを調べた。その結果、鉄関連因子のTfR1、DMT1、FPN1についてはその発現量に変化はなく、銅関連因子のCTR1、ATP7A/Bについて有意差はないが、薬剤併用による発現増加が観察された。以上の結果から、ミトコンドリア代謝を調節することによって、銅の取り込みが変化し、結果としてEleclomolの毒性を高めたと考えられた。しかしながら、移植腫瘍を用いた動物実験では予備的検討ではあるが、両者の併用による治療効果の増強は観察されず、細胞種の選択や併用タイミングの再検討が必要であることは分かった。(3)の項目については、レドックスイメージングを可能とする装置を導入し、電子スピン共鳴ESRによる腫瘍レドックス計測の実験系を立ち上げることができ、最終年度でのイメージングによる治療効果の評価に道筋を立てた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書に記載した当初の計画において、生体金属の恒常性破綻の標的として銅に着目し、ミトコンドリア機能を変化させることで、過剰の銅を細胞内に届けることができ、効率的に細胞死を誘導することを明らかにできた。しかし、in vivoにおいてはっきりとした治療効果の増強が認められなかったことから当初想定していた研究の進捗状況としては遅れていると判断せざるを得ない。一方で、腫瘍レドックス状態を可視化する実験系を立ち上げることができたことは、本研究の骨子である「イメージング等検出技術によって生体金属の恒常性破綻をがん放射線治療のアプローチとすることが可能か?」という問いに答えるうえで大きな進捗であるため、総合評価としてやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2024年度では(2)増感標的となる分子の決定と実験的治療検討をin vitroで行うことおよび(3)in vivoでの検討とイメージングによるメカニズム解析について、引き続き検討を行う。すなわち、レドックスイメージング技術を用いて、鉄や銅の恒常性破綻を誘発したときの変化を評価し、治療効果の予測および効率化の可能性について明らかにする。またイメージング結果を支持するデータとして、腫瘍サンプルを用いた組織学的および分子生物学解析によって、観察された治療効果の原因となっている酸化還元関連因子の動態、および細胞死やシグナル経路を明らかにする予定である。
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