研究課題
ゲノムDNA損傷を修復する仕組みの機能不全は、がんや先天性疾患の原因となる。DNA修復の欠損は自然免疫応答を介して細胞老化や細胞死を引き起こし、その仕組みは傷ついた自己DNA断片に起因するDNA損傷応答として理解されてきた。本研究では、DNA修復酵素RNase H2を欠損して恒常的にDNA損傷が蓄積するヒトTK6細胞株をもとに、如何なる経路でDNA鎖切断ならびにゲノム変異が誘発され、その結果として自然免疫応答に至るのかを同定することを目的とした。本年度は、RNase H2の欠損または変異下で変動するオープンクロマチン領域について、ATAC-seqによる解析を行った。まずATAC-seqを安定的に運用するために、ライブラリー調製に要するトランスポゼースTn5の過剰発現・精製プロトコールを確立した。自家製Tnを用いて調製したライブラリーは、市販品Tn5を利用した場合と同等以上の品質であることが確認できた。ATAC-seq解析の結果、RNase H2の機能が失われた細胞株では、自己炎症疾患の発症に直結する自然免疫応答遺伝子群における構造変化が認められた。またこれらのクロマチン構造変化は、RNA seq解析による遺伝子発現動態と密接な相関が認められた。以上から、ゲノムDNA損傷に起因する遺伝子発現およびクロマチン構造動態を同定することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
DNA損傷が蓄積した細胞株シリーズを用いて、RNA0-seqおよびATAC-seq解析によって自己炎症疾患につながる遺伝子群の発現・クロマチン構造変動を同定すると共に、その原因となるDNA損傷の形態までを捉えることができた。以上から、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
ATAC-seqで得られたデータをもとに、自然免疫応答遺伝子群に共通するモチーフの解析を進める。また自然免疫応答を司るパターン認識受容体を欠損したTK6株を用いて、DNA損傷の蓄積から下流の免疫応答シグナル経路を同定する。
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Bio Clinica
巻: 39 ページ: 177-179
巻: 38 ページ: 803-805
BioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/2023.10.18.562991
https://uralab.wordpress.com/2023/11/14/jems/