• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実績報告書

選択性制御を鍵とした環状ホスト結晶による有機分子およびレアメタルの精密分離

研究課題

研究課題/領域番号 22H03776
配分区分補助金
研究機関東北大学

研究代表者

諸橋 直弥  東北大学, 工学研究科, 准教授 (70344819)

研究分担者 服部 徹太郎  東北大学, 工学研究科, 教授 (70241536)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードカリックスアレーン / ホスト分子 / 有機分子分離 / レアメタル分離 / 有機結晶
研究実績の概要

カリックスアレーン(CA)類などの結晶を用いた難分離性有機分子およびレアメタルの精密分離法の開発に関して計画した課題に対し,本年度は下記の成果を得た。
1.カリックス[4]アレーンの結晶を用いた置換芳香族化合物異性体の溶液中からの包接における包接比の時間依存性の評価や各種平衡解析などから,ゲストの構造が定量性や選択性に与える影響を評価できることを明らかにした。また,種々のホスト-ゲスト包接結晶のX線結晶構造解析や熱分析から,ゲストの構造と生成する包接結晶の形態ならびに性質との関連性に関する知見を得た。カリックス[4]アレーン誘導体の結晶による置換シクロヘキサン類の選択的包接法の確立と選択性発現機構の解明から,ホスト分子の簡便な化学修飾によって選択性が制御できることを明らかにした。CA類縁体などのホスト分子結晶の有機分子包接能に関する知見も得た。
2. 配位性官能基を有するカリックス[4]アレーン類の結晶によるレアメタル捕捉法の開発において,塩結晶の利用の有効性,ホスト分子ならびに対象金属の適用性に関する重要な知見を得た。例えば,ジアミノカリックス[4]アレーンの塩酸塩の結晶が,酸性溶液中から,Pt(IV)を効率的に捕捉できることを見出した。また,金属イオン捕捉効率に与える酸の種類・濃度の影響の調査,抽出率の時間・温度依存性の調査から,抽出機構に関する知見を得た。さらに,他の白金族元素存在下においてもPt(IV)が捕捉可能であることを明らかにした。また,金属イオン捕捉後の結晶の各種解析から抽出化学種を推定した。一方,ジホスホン酸誘導体のアンモニウム塩結晶の水中からのイオン捕捉能を適用できる金属イオンの種類を拡張することにも成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ホスト分子の結晶を用いたゲスト包接においては,生成する包接結晶の形態や選択性を制御することは容易ではない。カリックス[4]アレーンの結晶を用いたゲストの包接における各種解析や生成する包接結晶の構造解析などから,ゲストの構造や外的因子が包接結晶の形態や性質に与える影響を明らかにし,上述の課題を解決するための重要な知見を得た。また,ホスト分子結晶のゲスト認識能を制御するためには,通常,複雑な化学修飾が必要であるが,簡便な化学修飾による選択性制御にも成功した。さらに,従来困難とされてきたホスト分子の結晶による水中からの金属イオン捕捉において,塩結晶の利用の有効性を明確化した。また,特定の金属イオンを効率良く捕捉できることも明らかにし,その抽出機構に関する知見も得た。

今後の研究の推進方策

本年度の課題を継続して行いながら,現在まで得られた成果をもとに,下記の課題に取り組む。
カリックス[4]アレーンの結晶による置換芳香族化合物異性体などの包接において,各ゲスト包接結晶の生成速度調査,X線結晶構造解析,熱分析等や包接に関わる各種平衡解析を網羅的に行い比較することで,ゲストの構造がホスト-ゲスト間の相互作用や包接結晶の性質に与える影響,外部因子が選択性に与える影響を詳細に調査し,明確化する。さらに,包接結晶から効率的にゲストが回収でき,ホスト結晶も再生できる方法を探索する。また,包接結晶の構造から認識可能なゲストを予測し,適用性の拡大も図る。これらの知見と実験条件を組み合わせることで,高効率・高選択的にゲストが分離でき,選択性も制御可能な分離プロセスを確立する。また,方法論の適用性の拡張を指向し,カリックスアレーン類縁体などを含むホスト分子の結晶を用いた難分離性有機分子の選択的捕捉法の開発と包接機構の解明にも取り組む。配位性官能基を有するカリックス[4]アレーン類の塩の結晶を用い,イオン交換を駆動力としたレアメタル分離法の開発,機構解明,選択性制御法の確立を継続して行う。例えば,ジアミノカリックス[4]アレーンの塩酸塩の結晶を用い,Pt(IV)を酸性溶液中から効率的・選択的に捕捉・分離する手法を確立する。捕捉効率,選択性に与える外部因子の影響の調査により抽出条件を最適化し,金属イオン捕捉後の結晶の構造解析などにより,詳細な抽出機構の解明も行う。また,金属捕捉結晶からの金属イオンの逆抽出法の確立や,他の白金族イオンに対する抽出能の評価も行う。一方,ジホスホン酸誘導体のアンモニウム塩の結晶が抽出可能なレアメタルの探索ならびに選択性評価を引き続き行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Switching of Guest Selectivity for the Inclusion of Regioisomers of Monosubstituted Phenols with Crystals of p-tert-Butylcalix[4]arene2023

    • 著者名/発表者名
      Naoya Morohashi, Atsuya Sakamoto, Tomoaki Matsumoto, Takuro Sasaki, Masaki Saito,Tetsutaro Hattori
    • 雑誌名

      Cryst. Growth Des.

      巻: 23 ページ: 3264-3274

    • DOI

      10.1021/acs.cgd.2c01417

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Selective collection of Yb(III) over La(III) and Eu(III) from aqueous solution by bis(tetramethylammonium) salt crystals of p-tert-butylcalix[4]arene-1,3-diphosphonic acid2023

    • 著者名/発表者名
      Naoya Morohashi, Mayu Osawa, Vandana Bhalla, Sahoko Sumida, Yutaka Kato, Ryuki Takahashi, Nobuhiko Iki, Tetsutaro Hattori
    • 雑誌名

      CrystEngComm

      巻: 25 ページ: 5072-5076

    • DOI

      10.1039/D3CE00525A

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Selective Inclusion of Cyclohexanone from a Mixture with Cyclohexanol Using 1,3-Diaminocalix[4]arene Crystals2023

    • 著者名/発表者名
      Tomoaki Matsumoto, Kenta Hoshi, Ikumi Koyama, Naoya Morohashi, Tetsutaro Hattori
    • 雑誌名

      Cryst. Growth Des.

      巻: 23 ページ: 7134-7140

    • DOI

      10.1021/acs.cgd.3c00514

    • 査読あり
  • [学会発表] p-tert-ブチルカリックス[4]アレーン-1,3-ジホスホン酸ビス(テトラメチルアンモニウム)塩の結晶を用いた水中レアメタルの選択的固相抽出2024

    • 著者名/発表者名
      髙橋流輝,大澤眞由,五十嵐成也,諸橋直弥,服部徹太郎
    • 学会等名
      日本化学会第104春季年会
  • [学会発表] ジアミノカリックス[4]アレーン塩酸塩の結晶による白金族イオンの選択的捕捉法の開発2023

    • 著者名/発表者名
      諸橋 直弥, 石渡 圭悟, 藤巻 佑太, 久留主 優, 岡本 祥真, 服部 徹太郎
    • 学会等名
      第20回ホスト-ゲスト・超分子化学シンポジウム
  • [学会発表] Selective collection of hard metal ions from water with bis(tetramethylammonium) salt crystals of p-tert-butylcalix[4]arene-1,3-diphosphonic acid2023

    • 著者名/発表者名
      Ryuki Takahashi, Mayu Osawa, Naoya Morohashi, Tetsutaro Hattori
    • 学会等名
      令和5年度化学系学協会東北大会及び日本化学会東北支部80周年記念国際会議
    • 国際学会
  • [備考] 東北大学 服部研究室

    • URL

      https://www.che.tohoku.ac.jp/~orgsynth/

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi