研究課題/領域番号 |
22H03788
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山田 浩之 北海道大学, 農学研究院, 講師 (10374620)
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研究分担者 |
鈴木 透 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (20515861)
中村 隆俊 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (80408658)
田開 寛太郎 松本大学, 総合経営学部, 講師 (40825163)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ドローン / バーチャルリアリティー / ICT教育 / デジタル変革 / 湿地生態系 / バーチャルツアー |
研究実績の概要 |
本課題は、課題1のUAVVRモニタリングシステム・VRデジタルアーカイブ法の技術開発、課題2のVRコンテンツを用いた植生・環境調査法の開発と研究DXの推進、課題3のVR教材を用いた環境教育手法の構築と教育DXの推進の3つの課題を設定して遂行している。 課題1では、旧システムを用いた映像の撮影プロトコルを検討し、美唄湿原、マクンベツ湿原、歌才湿原、静狩湿原、柏原東湿原、幌向湿原(再生地)、勇払湿原の計7カ所の撮影を実施した。旧システムの問題であった携行性、飛行時間、測位精度を向上させた新システムを開発した。さらに、撮影したVR画像にUAVによるRTKGPSの正確な位置情報を付与する手法や得られた撮影画像、VR映像、飛行記録等のデータを取りまとめるフォルダ構成、メタデータといったデータアーカイブ化の方法について検討した。 課題2では、UAV撮影のVR画像を用いた植生調査法について検討し、標準的な手順・手法について取りまとめた。また、植生調査データから環境情報を推定する方法について、土壌水pHを目的変数とした植生データによる一般化線形モデルを用いて検討した。得られた最適モデルについて、UAV植生調査データから推定pH値を求め、実測値との比較を行うことでモデルの推定精度について検証した。 課題3では、学校教育および社会教育に焦点を絞り、インターネットからできる限りの実践事例を検索し、VR教材を用いた環境教育プログラム開発のための予備的調査を行い、VR教材の視聴方法と教材タイプを検討した。また、VRコンテンツを用いた模擬講義に向けた環境整備のため、実施候補地の長野県飯田市との連携・協力体制の構築を始め、小学生を対象とした教育実践の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1では、計7カ所の湿原での撮影を実施したが、UAV空撮地域での地権者および関係者との調整が難航したため、予定していたその他の湿原での空撮を翌年度に延期した。その過程で、効率的な映像の取得のための撮影プロトコルを検討した。カメラやUAVの選定と各種パーツの製作により、旧システムの問題であった携行性、飛行時間、測位精度を向上させた新システムを開発し、性能評価を実施した。また、撮影したVR画像に正確な位置情報を付与する手法の開発やデータアーカイブ化の検討、バーチャルツアーをベースとしたVRコンテンツ制作については予定通り実施することができた。 課題2のUAV植生調査手法の構築については、これまでに撮影した既存のVR画像を利用することで年度計画通りに進めることができた。UAV植生調査データから環境情報を推定する方法については、水位環境と土壌水pH環境を対象に構築を試みたが、水位環境は常に大きく変動する性質があり推定に不向きであることが判明したため解析から除外した。土壌水pH環境の推定・検証については概ね予定通り実施することができた。 課題3の学校教育における予備的調査では、初等中等教育におけるVRを活用した実践研究をJ-STAGEから約130件の先行研究を選定し、これらの研究をもとに学術雑誌論文の投稿準備を進めた。また、教育実践に向けては、小学校をはじめ自治振興センター、飯田市美術博物館や公民館との打合せを完了し、連携・協力体制を整備した。
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今後の研究の推進方策 |
課題1では、開発した新システムを用いて撮影の遅れた湿原を含めて10カ所以上の湿原の撮影を実施する。また、新システム用の撮影プロトコルを作成し、システムとプロトコルの有効性を評価する。また、得られたデータのデータベース構築を進め、データの公開方法を検討する。さらに、教育・研究用コンテンツとしての効率的なバーチャルツアー制作方法について検討する。 課題2では、植物バーチャル標本に使用する植物写真について、特に開花期を中心に各湿原で撮影を行う。また、湿原生態系を特徴付ける地形や景観に関する撮影も同時並行で進める。さらに、バーチャル教材としての使用を想定した湿原での植生調査方法に関する現地解説動画について、VRカメラを用いて湿原内で撮影を行う。 課題3では、VR教材を用いた教育実践を確実に実施するため、実施候補地との密な情報共有を進める。また、教育実験で使用するVRヘッドセット(両眼立体視機器)による、長時間のVR体験や密集した視覚刺激は、不快感や目の疲労を引き起こす可能性があることから、所属機関による研究倫理審査申請の準備を進める。さらに、授業のビデオ録画と分析、紙媒体によるアンケート調査を中心に、教育効果を検証する方法を検討する。
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