研究課題/領域番号 |
22H03793
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片山 歩美 九州大学, 農学研究院, 助教 (70706845)
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研究分担者 |
東 若菜 神戸大学, 農学研究科, 助教 (20780761)
徳本 雄史 宮崎大学, キャリアマネジメント推進機構, 准教授 (60780153)
菱 拓雄 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50423009)
久米 朋宣 九州大学, 農学研究院, 准教授 (30816393)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 微生物呼吸 / 水利用効率 / 森林劣化 / ササ / 土壌微生物 / トビムシ |
研究実績の概要 |
九州南部のブナ群生地では今、鹿により下層植生(ササ)が消失し、深刻な土壌流出、ブナの衰退や枯死、森林の裸地化が進んでいる。本研究は、下層植生消失がブナの水・養分ストレスに与える影響を解明し、ブナ衰退によるリター被覆の減少が土壌の生物多様性や生態系機能に与える影響を明らかにする。また、リター被覆が土壌環境の改善を介して、ブナのストレスおよび土壌の生物多様性・生態系機能を回復させるかを操作実験により確かめる。
今年度、土壌侵食の指標である根の露出度合いが高いほど、ブナの成長は低下し、水利用効率が上がることを明らかにした。土壌水分はおおむね高かったことから、下層植生消失による土壌侵食が根の枯死を招き、給水が十分に行えていないことが考えられた。また、根の露出度合いと土壌特性の関係を調べたところ、侵食が起こっているところでは土壌炭素が低く、微生物呼吸が低いこと、真菌類の群集には影響を与えないが細菌類の多様性が変化することが明らかとなった。一方で、ササの存在する林分では真菌類の多様性が高いことが明らかとなった。 2022年8月にリター被覆操作前の土壌および樹木生態生理パラメーターを取得し、衰退しているブナでは水ストレスがあり、土壌微生物相は健全個体とは異なることが明らかとなった。2022年11月に健全木、衰退木それぞれ3個体にリター被覆実験を行った。
成果発表としては、国際誌論文が1報、国際誌査読中論文が3報あり、関連する学会発表は3件あった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、リター被覆前にすべき土壌生物や樹木生態生理に関するデータを取得することができた。それに加え、柵内にササが残っている林分や、まだシカの食害が起こっていない林分でも調査を行うことができた。また、スプラッシュ侵食を起こす雨滴エネルギーのホットスポットの発見や樹種間差など、侵食メカニズムに関する研究も進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
リター被覆実験については、2年後を最終ターゲットとするが、土壌の経年変化はモニタリングする。また、ササや樹木実生などが存在する林分や柵内において同様の調査を行うことで、メカニズムに迫るデータを取得する。また、別途リター被覆実験を行い、地温や凍結融解などの環境データの蓄積を行う。
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