• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

シルクロードの伝統知から探る遊牧民の草原適応術とレジリエンスの学知融合研究

研究課題

研究課題/領域番号 22H03823
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

相馬 拓也  京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (60779114)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワードキルギス / イシククル湖 / オーラルヒストリー / 天山山脈 / 騎馬鷹狩 / 狩猟誌 / 動物民俗 / 移牧
研究実績の概要

初年度22年度は、キルギス北東部イシククル湖周辺のコクサイ村、グレゴリエフカ村などの、牧畜コミュニティを中心に、山岳適応や家畜飼養にかんする伝統知のドキュメンテーションを実施した。牧畜民からは、伝統の家畜飼養法、在来有用植物の利用方法、季節移動の実態と宿営地の選定など、牧畜社会の実態に肉薄できる情報が多数収集された。あわせて、ヒトと動物の関係性を物語る、数多くのオーラルヒストリー、民話・説話、フォークロア、狩猟伝承などを収集することができた。
イシククル湖南部のバイボースン自然保護区では、ユキヒョウの生態観察調査を進めており、現在7地点でトラップカメラが作動している。これらのカメラで、ユキヒョウの生態をとらえた画像・映像100回以上の撮影に成功した。現在は撮影された画像をもとに、斑紋特定などで個体識別を進めている。
天山山脈テレスケイアラトー山中のスルト夏牧場では、白色ヤクの多頭飼育群に着目し、飼養方法のインタビュー調査、行動観察などに加えて、血液サンプルの採取や、GPS装着による行動圏調査などを実施した。ヤクの新生個体の染色体異常などの症例があり、現地牧畜民からの強い要望により、DNAによる解析を進めている。
当該年度の夏季フィールド調査には、京都大学や他大学の院生・学生6名を同行し、フィールド実践の機会に触れてもらった。また、キルギスの中央アジア=アメリカン大学の学生4名もアドホックに同行し、現地の若者たちに現地の遠隔農山村の暮らしに触れもらう機会を創出している。また、トルコ=マナス大学では、農学部と獣医学部と協働研究を実施しており、現地ラボの共同利用のほか、同大所属の修士院生とのコラボレーションも進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2022年度(R4年度)は、海外渡航制限の緩和により、当初計画を上回る50日間以上のフィールド調査を、キルギスとカザフスタンで実施することができた。ただし、モンゴルは制限緩和後も、遠隔地に外国人来訪による感染拡大への恐怖や排除の動きがあったため、当該年度は断念した。とくに年度前半期、キルギスでは中央アジア=アメリカン大学、トルコ=マナス大学、キルギス科学アカデミー、アルファラビ=カザフ国立大学、との協働体制を確立したことで、データ収集とアウトプット機会が飛躍的に向上した。

今後の研究の推進方策

代表者によって、現地活動地の研究所・高等教育機関をはじめ、専門家や学生、カウンターパートとの高度な連携体制が確立されている。そのため、今後は日本にいながらシームレスなデータ収集と分析を共有する。次年度には、キルギスの共同研究者と共著で、2度の国際学会で成果報告も予定されている。
また研究活動では、研究者のみならず、学生・院生などの動員を積極的に進めている。本研究の遂行が現地のユース・エンパワメントに直結し、若者たちのフィールド調査や研究活動への参加機会を後押しするスキームを確立しつつある。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)

  • [国際共同研究] 中央アジア=アメリカン大学(AUCA)/トルコ=マナス大学/キルギス科学アカデミー(キルギス)

    • 国名
      キルギス
    • 外国機関名
      中央アジア=アメリカン大学(AUCA)/トルコ=マナス大学/キルギス科学アカデミー
    • 他の機関数
      2
  • [国際共同研究] アルファラビ=カザフ国立大学(カザフスタン)

    • 国名
      カザフスタン
    • 外国機関名
      アルファラビ=カザフ国立大学
  • [国際共同研究] モンゴル国立大学(モンゴル)

    • 国名
      モンゴル
    • 外国機関名
      モンゴル国立大学
  • [雑誌論文] アルタイ山脈に美しき聖獣ユキヒョウの《聖》と《死》を探る2023

    • 著者名/発表者名
      相馬 拓也
    • 雑誌名

      E-Journal GEO

      巻: 18巻1号 ページ: 54-70

    • DOI

      10.4157/ejgeo.18.54

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ユキヒョウとモンゴル遊牧民、狩りと畏れのフォークロア2022

    • 著者名/発表者名
      相馬 拓也
    • 雑誌名

      ビオストーリー

      巻: 37 ページ: 66-68

  • [学会発表] シルクロードの人類と動物の3000年史―《聖性》と《死性》入り混じる動物観を探る2023

    • 著者名/発表者名
      相馬 拓也
    • 学会等名
      NHK文化センター寄付講座:世界の“不思議”に迫る!京大「白眉」研究者たち
    • 招待講演
  • [学会発表] 草原シルクロードの民族どうぶつ学フィールドノート2022

    • 著者名/発表者名
      相馬 拓也
    • 学会等名
      日本文化人類学会 第56回学術大会
  • [学会発表] シルクロード遊牧民の奥義、イヌワシ飼育の知と技法おしえます!2022

    • 著者名/発表者名
      相馬 拓也
    • 学会等名
      鏡プロジェクト(京都大学創立125周年記念イベント)
    • 招待講演
  • [学会発表] Community Development by the Agroforestry Project and Traditional Plant Use around the Annapurna Range2022

    • 著者名/発表者名
      Takuya SOMA
    • 学会等名
      Sustainable Mountain Development Conference 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] 映画『白い豹の影』作品世界イントロダクション:野生動物をめぐる聖と死2022

    • 著者名/発表者名
      相馬 拓也
    • 学会等名
      中央アジア今昔映画祭ステージトーク
    • 招待講演
  • [学会発表] Re-considering Human & Animal Well-Being from the Steppe Silk Road2022

    • 著者名/発表者名
      相馬 拓也
    • 学会等名
      早稲田大学高等研究所15周年記念シンポジウム
    • 国際学会 / 招待講演

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi