研究課題/領域番号 |
22H03827
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山本 宗立 鹿児島大学, 総合科学域共同学系, 准教授 (20528989)
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研究分担者 |
松島 憲一 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (30359731)
田中 義行 京都大学, 農学研究科, 教授 (20704480)
小枝 壮太 近畿大学, 農学部, 准教授 (00629066)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 民族植物学 / 食文化 / キダチトウガラシ・ハバネロ類・ロコト類 / 伝播経路 / カプサイシン類 |
研究実績の概要 |
東南アジアにおける唐辛子(トウガラシ属植物)の遺伝資源・文化資源に関する文献調査を行った。世界中から収集されたトウガラシ(C. annuum)130系統・品種を用いて、MIG-seq法によるSNPの多型解析によって類縁関係を調査した。その結果、東南アジア(ミャンマー、カンボジア、タイ)と東アジア(日本、中国、韓国)のトウガラシ、メキシコおよびピーマン・パプリカ類は異なるクラスターに分類され、東アジアのクラスターでは、大まかに中国と日本の品種から構成されるサブクラスターにまとまってわかれた。また、種不明のネパール産在来品種ダレ・クルサニについて4倍体品種であることをフローサイトメーターを用いて確認した。キダチトウガラシ(C. frutescens)のリシーケンスデータを用いて、ミトコンドリアゲノムの多型を探索したが、ミトコンドリアゲノムのヘテロ性が高いために種内変異の検出はできなかった。辛味成分量と草姿の異なるキダチトウガラシ2系統の交雑集団を作成し、F2個体について辛味成分量と草姿を評価した。ハバネロ類(C. chinense)はトウガラシ属植物の中でも果実にフルーティーでエキゾチックな香りを有し、世界で広く栽培されているトウガラシはそのような香りを果実に有していない。そこで、このような違いに影響している遺伝子の同定を試みた。ガスクロマトグラフィーによる香りの調査、液体クロマトグラフィーによる辛味の調査、遺伝子解析を組み合わせて解析したところ、フルーティーでエキゾチックな香り成分の生合成に寄与するアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT1)を同定した。また、香りが強いハバネロ類の果実ではAAT1の遺伝子発現量が高く、香りが少ないトウガラシの果実ではAAT1の遺伝子発現量が低いことが大きく関与していることを明らかにした。研究成果については、国際会議で2件および国内学会で7件発表し、査読付き論文を3件公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り文献調査・現地調査・実験研究が進んでいる。また、国内外における学会発表や査読付き論文の公表がなされているため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を円滑に進めるため、打ち合わせや研究成果を共有する会議などを複数回開催する。東南アジアにおける唐辛子(トウガラシ属植物)の遺伝資源・文化資源に関する文献調査を引き続き行う。文化資源の現地調査に関しては、これまでに研究代表者が調査してきた項目を踏襲し、同じ調査表を用いて調査を行う。2023年度に得られたMIG-seq法によるSNPの多型解析結果を、さらに詳細に解析を進め、トウガラシ(C. annuum)の伝播や分化を明らかにする。種不明のネパール産在来の4倍体品種ダレ・クルサニについて複2倍体であると考えられるため、雑種性の確認を行い、これまで蓄積してきたシーケンスデータにより雑種の由来となった種を確定する。伏見甘、万願寺、伊勢ピーマンなどの日本の甘味トウガラシ品種について、ししとうで明らかになった辛味制御遺伝子座が関与しているかを解明するため、ししとうなどとの交配と辛味成分の分析などを組み合わせて解析する。キダチトウガラシ(C. frutescens)および他の栽培種のリシーケンスデータを用いて、トウガラシ属植物のミトコンドリアゲノムの部分配列を決定し、ミトコンドリアゲノムの種内変異を探索する。キダチトウガラシの交雑集団の辛味および草姿についてQTL解析を行う。東南アジアや南アジアで利用されているハバネロ類(C. chinense)の中にはジョロキアなどの果皮表面が凸凹した激辛品種がある。これらの品種の果皮の組織形態学的な調査、特徴的な表現型を決めている遺伝子に関する調査を行う。調査結果・実験結果が得られ次第、日本熱帯農業学会や園芸学会などで随時研究発表を行うとともに、国内外の学会誌に論文を投稿する。
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