研究課題/領域番号 |
22H03841
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大塚 靖 鹿児島大学, 総合科学域共同学系, 准教授 (00244161)
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研究分担者 |
川西 基博 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (50551082)
谷口 光代 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (30613806)
山本 宗立 鹿児島大学, 総合科学域共同学系, 准教授 (20528989)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ミクロネシア / 蚊媒介性感染症 / 住民主導 / 島嶼 |
研究実績の概要 |
医療体制が脆弱なミクロネシアでは、蚊が媒介する感染症が近年流行を繰り返しており、大きな問題となっている。このような地域では病気を媒介する蚊幼虫の生息場所となる小容器を除去することが効果的であり、これまで我々が行ってきた地域住民主導による蚊の対策フレームワークは効果を示してきた。その上で、他の地域に広く普及するにはどのような改良を加えるべきかが課題となってきた。本研究では、このフレームワークが他のミクロネシア島嶼地域に応用可能であるかを検証し、気候変動・社会変動と蚊の発生の関係性を明らかにする。これまでのフレームワークを発展させ、世界の島嶼地域に対応できる蚊媒介性感染症対策の確立を目指している。そのためこれまでミクロネシア連邦で調査を進めてきたが、2022年度は新型コロナウイルスの影響で調査が行えず、パラオにおいて蚊の発生状況を調べ、我々のフレームワークが有効であるかを調査する予備試験を行った。その結果、蚊の発生状況および発生容器の種類が大きく異なることから、それぞれの地域に合わせた対策が必要であることがわかった。2023年に一部の予算を繰越し、ミクロネシア連邦チューク州ピス島で調査を行った。新型コロナウイルスの影響が大きかった島嶼での変化について、聞き取り調査を中心におこない、一時は州都であるウェノ島へ移動が制限され、食料が外部から入らないなどの厳しい状況があった。島内で持久できる作物を栽培するなど、地域の連携により新型コロナウイルスの影響を克服したことを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度はミクロネシア連邦で調査を予定をしていたが、新型コロナウイルスの影響で行えず、申請時には予定していなかったパラオで我々の対策フレームワークが他のミクロネシア島嶼地域に応用可能であるかを検証した。2023年に一部の予算を繰越し、ミクロネシア連邦チューク州ピス島で調査を行ったが、新型コロナウイルス以前との変化を検証するにとどまり、本格的な調査は次年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
1.自然・社会環境の変化に伴う蚊の発生状況調査:2023年度のピス島での結果を基にした調査をピス島およびピンゲラップ島で行う予定である。台風の頻発および長雨などは、蚊の発生数に大きな影響を与えると予想されている。また、台風や長雨などは島の植生を変化させ、それに伴い食生活にも影響を与える。さらに、両島では近年住民の島外移住により空き家が多く見られるようになってきた。人の手の入らない空き家のある居住区は異なる植生となっていく。そこで、ピス島およびピンゲラップ島の自然・社会環境の変化に伴う蚊の発生状況に関する基礎データを収集する。簡易の気象計測計を両島に設置し、現地のカウンターパートが雨量や気温などのデータを計測するとともにJaxa Global Rainfall Watchなどの外部機関の気象データも参照し、気候変動と蚊の発生関係を明らかにする。次に、空き家における植生の変化の中で、どのように蚊の発生が変化していくのかを、いくつかの特定の空き家およびその周辺居住区において調査する。また、並行して、全居住区における蚊の発生源・蚊幼虫の密度・蚊の種組成の調査、食事調査から蚊発生源の個数の推定を行う。 2.政府-島の診療所担当-島民の関係性に関する調査:ミクロネシア連邦のピス島およびウェノ島(州都)、ピンゲラップ島およびポンペイ島(首都・州都)において調査を行う。医療行政関係者、病院の医師・看護師、島の診療所担当に対して、政府の蚊媒介性感染症対策やその変遷に関する認識、理解度、支援の方向性に関する聞き取り調査を行い、蚊媒介性感染症対策の現状や課題を明らかにする。住民主導の感染症対策をベースにしながらも、多様なアクターが関与できる仕組みと、持続可能で広範囲への普及が可能なフレームワークの確立を目指す。
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