研究課題/領域番号 |
22H03860
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
今井 弘二 国立研究開発法人情報通信研究機構, 戦略的プログラムオフィス, 主任研究技術員 (50711230)
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研究分担者 |
成瀬 康 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 室長 (00455453)
安田 哲 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波標準研究センター, 研究員 (20820806)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | VR / XR / 仮想観光 / 共同体験 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」という)の影響で世界的に観光交流が途絶え、バーチャルツアーなどとして観光の気分を味わう新たなサービス(以下「仮想観光」という。)が人気を集めているが、仮想観光が利用者等の心理に与える影響や観光業界の各所に与える利害損失ついては十分に評価されていない。そこで、本研究は仮想観光の実情を把握して施策を講じるために、共同体験できる仮想観光の形態を具現化し、被験者の主観的な感想や計測による客観的な評価によって仮想観光の各種形態に対する利用者等の集団心理を明らかにすることを目的としてその準備を進めた。 仮想観光の各種形態を評価するにあたって、初年度は3つの形態を具現化した。その1つ目は“平面型”である。これはプロジェクターやパソコン、タブレットなどの平面のディスプレイで仮想観光を体験する形態である。二つ目は“ドーム型”である。これは仮想空間をプラネタリウムのようなドームに投影して観覧者が体験する形態である。観覧者がアバターとしてドームに参入し映像空間中を散策することができるため、新たな演出が可能である。3つ目は“HMD型”である。これはゴーグル型の装置を頭に装着して観光地を高い没入感で体験する形態である。HMD型では、360度カメラによるパノラマ映像に加えて、3Dレーザースキャナーによる建造物の実測データを仮想空間に取り入れて観光地を忠実に再現できるため、“場の雰囲気”などの高い現実感とその利用者等の影響を評価することが期待される。また、3つの形態のコンテンツとして、施設や乗り物、宿泊施設、行事、景観の5つのジャンルを制作し、実証実験の準備を検討するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は仮想観光の各種形態を評価するため、まず各種形態を具現化することが重要であるが、初年度に平面型、ドーム型、HMD型の3つの形態を実現したのは大きな進展である。また、並行して5つのジャンルのコンテンツを制作することができたため、実証実験の前段階まで進めることができた。これは当初の計画以上の進展である。
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今後の研究の推進方策 |
仮想観光のコンテンツを制作して、引き続き3つの形態(平面型、ドーム型、HMD型)の実証実験の準備を進める。実証実験は3段階に分けて実施する。まず、1段階目では被験者の属性や観光の各ジャンルに対する意識や実態の調査から被験者を分類して、各ジャンルのコンテンツを被験者に体験してもらう。そして、満足度や興味の度合いの変化を中心とするアンケートから仮想観光の各種形態が有効な年代やジャンルなどのおおよその傾向を特定する。 2段階目では、1段階目の調査から満足度の増減などが比較的大きい仮想観光の形態やジャンル、その評価をした被験者を対象として、改めて同類の体験をしてもらいながら脳波や脈拍、視点の動きなどを計測する。そして、計測データを多変量解析することで客観的に評価するとともに、被験者等のコミュニケーションがどのようなシーンで起こり、集団心理にどのような影響を与えているのかなどを導き出す。また、1段階目の結果とも合わせて観光誘致や満足感を与えるためなどの目的別に効果的と考えられる組み合わせをマトリクス表などにまとめる。 3段階目では、それまでの結果から効果的と考えらえる内容について社会実証する。実証例としては、平面型、或いはHMD型のコンテンツを施設等に設置して有用性を評価する。さらに、地域横断的な新たな観光交流の試行として、自治体の友好都市とも連携してそれぞれの地域の魅力を収めたコンテンツを相互に体験してもらうなどの遠隔交流についても挑戦的に実践する。
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